概均質ベクトル空間を使って密度定理の第二主要項を計算するためには,概均質ベクトル空間に伴う指数和の大きさを評価する必要がある.昨年度に,この指数和を計算する単純で効果的な方法を見出し,次元の小さないくつかの概均質ベクトル空間の対して指数和の計算を実行した.
本年度はこの研究を推し進め,より複雑な概均質ベクトル空間に対して指数和を計算した.特に (a) 三変数二次形式の対のなす12次元の概均質ベクトル空間について,この指数和を計算した.また,(b) 古典型と呼ばれる5系列の概均質ベクトル空間のうち3系列について指数和を考察し,この計算方法がやはり有効であることを確かめた.
(a) は第二主要項の導出にも有用であると見込まれる成果だが,直接的な応用として,概素数判別式をもつ三次体と四次体の個数を下から評価することに成功した.また概均質ベクトル空間のゼータ関数の関数等式にこの指数和が現れることから,副産物として,いくつかの概均質ベクトル空間について関数等式の明示式を得た.特に二元三次形式の空間のゼータ関数については,自己双対的な関数等式を新たに見い出すこともできた.この成果については,現在論文を執筆中である.(b) は,指数和の一般論を構築する上で有用な成果であると考えられる.この方面についても今後さらに研究を進めていく予定である.
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