研究課題/領域番号 |
24654007
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
木村 俊一 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10284150)
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キーワード | 代数幾何 / モチーフ |
研究概要 |
黒田茂氏、高橋宣能氏との共同研究が、Journal of Algebra から The closed cone of a rational series is rational polyhedral という論文として発表された。これにより、モチビックチャウ級数が全ての代数多様体に対して有理的になるか、という基本問題が解決されたことになる。この成果について、城崎代数学シンポジウムなどで発表した。 大学院生の田端亮氏との共同研究で、次元を大きくした時の Immanant の漸近挙動について部分的な成果を得た。すなわち、ほとんどのヤング図形に対して、nI-E(但しnは行列のサイズ、Iは全ての成分が1となる行列、Eは単位行列)がDeterminant - Immanant 数直線上での最大値を与えることの強い証拠を得、またその最大値の漸近的挙動がわかってきた。例えばフックのImmanant で、縦横の比がcとなるような極限を取ると、数直線上の2c/(1+c)という値になることを証明した。 大学院生の沖吉真実氏との共同研究で、フィボナッチ進法を用いた面白い連分数展開を発見した。 2月に第9回鹿児島代数解析幾何セミナーを開き、数学の幅広い分野の研究の最前線について互いに意見交換を行った。また、3月に第1回岡山ー広島代数学シンポジウムにおいて、田端氏、沖吉氏が研究成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文 The closed cone of a rational series is rational polyhedral (黒田茂氏、高橋宣能氏との共著)の出版によって本研究課題の基本問題が解決し、今後はより精密な研究に進む段階に入れた。 Immanant の挙動について、これまでは n が3、4、5程度での研究であったが、本年度、n を無限に大きくした場合の挙動がある程度見えるようになり、これは量子情報との関係で将来有益な視点を提供してくれるものと期待している。 また、フィボナッチ進法の連分数については、係数をヤング図形としたモチビック連分数を調べる中で生まれて来たもので、モチビックゼータが多項式にならない対象をモチビック連分数に展開して調べる、という研究課題の第一歩を踏み出せた。
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今後の研究の推進方策 |
モチビックチャウ級数が一般には有理関数にならない、という結果が得られたが、一方で有理的でないモチビックゼータをモチビック連分数に展開してその性質を読み取る、という研究方策が見つかったので、まずそれを有理的でないモチビックチャウ級数に適用して何が得られるかを調べる。 モチビックゼータの有理性の証明、およびモチーフの有限次元性を証明しようという問題は依然として本研究の第1主題であるが、モチーフの連続変形族を用いた作戦を今後突き詰めていきたい。 モチビックゼータのアイデアを他の圏に対して適用したらどうなるか、という問題に関して、グラフの圏、ヒルベルト空間内のベクトルの集合がなす圏、などについて有理性(および有理的でなかったらモチビック連分数)について調べたい。 また、n が大きい場合のImmanant の挙動がわかってきたが、これは超多粒子でのエンタングルメントの挙動の記述に使えそうだと考えている。エンタングルメントとImmanant との関係を調べて、我々の発見がどういう意味を持つのか調べたい。 これらの研究を進めるため、2月には第10回鹿児島代数解析幾何セミナー、3月には第2回岡山-広島代数学シンポジウムの開催を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
東京で開催されている月曜特異点セミナーに原則参加するつもりで予算を組んでいたが、専攻長であったため学内の様々な会議が重なり、ほとんど参加できなかった。 平成25年度に月曜特異点セミナーで聞き逃した重要な講演を行った講演者などを広島大学の代数学セミナーに招聘する予定である。
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