期間全体の主な成果は、モチビックゼータ、およびその一般化であるモチビックチャウ級数について、有理性・非有理性の判定条件の研究を進めたことである。 (1)代数多様体のモチビックチャウ級数について、2012年のElizondo 教授との共同研究において、A1-homotopy という自然な関係式を入れれば、トーリック多様体の場合は常にモチビックチャウ級数が有理的になることを示した。一方、最終年度に発表された高橋宣能氏、黒田茂氏との共同研究において、一般の多変数の級数が有理的になるための強力な必要条件を与え、特に射影平面の一般の10点ブローアップにおいて、モチビックチャウ級数が非有理的であることを証明した。さらに、射影空間の因子のモチビックチャウ級数ではinfinitesimal A1-homotopy という弱い関係式においてもモチビックチャウ級数が有理的になることを証明した。 (2)有限次元的な対象2つのテンソル積が再び有限次元的になる、というのが研究代表者による古典的な成果であるが、Tabuada 教授からその逆は成り立つか、という質問を受け、共同研究で部分的に解決した。Q-linear additive rigid monoidal category において、Nは0でない有限次元的対象、NとMのテンソル積も有限次元的対象であれば、Mも有限次元的対象である。有限次元の概念は射に対しても定義されるが、fが0でない有限次元的射、fとgのテンソル積が有限次元的だとしても、gが有限次元的とは限らない例が見つかった。 (3)箱玉系に対して母関数を定義することができる。有限個の玉を持つ箱玉系、あるいは準周期箱玉系に対しては、その母関数が有理的になることを証明した。なお、これは沖吉真実氏との共同研究である。
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