研究課題/領域番号 |
24654015
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
河内 明夫 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 数学研究所専任研究所員 (00112524)
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キーワード | 結び目理論 / 領域選択ゲーム / 領域点灯ゲーム / 量子スイッチ / 結び目パスワード |
研究概要 |
大阪市立大学数学研究所では、21世紀COEプログラムに採択され結び目を焦点とする研究拠点として多くの成果を上げてきた。この研究により培った結び目理論は工学や医学分野への応用が期待できるものである。。結び目理論を応用した図形ゲーム「領域選択ゲーム」(Region Select)について、共同研究先の(株)グローバルエンジニアリングの協力を得て、この図形ゲームの幼児版を製作し、数字をよく知らない幼児がどの程度図形による数学アルゴリズムを獲得できるかを研究するための調査の環境を整備し、検証の研究を開始した。調査対象としては、大阪教育大学附属幼稚園、大阪女子短期大学地域子育て支援研究所、社会福祉法人晴朗会すくすく保育園の3施設に、この幼児版の図形ゲームを組込んだタブレット端末を配布して、その教育効果の初期のデータを取得した。この幼児向け図形ゲームの活動について、学長記者懇談会(大学ホームページで掲載済み)で説明を行い、それは読売新聞の記事にもなった。調査した3施設から取得した教育効果のデータに基づく検討内容は、2013年度報告書「結び目の数学教育への導入」No.4の第1章で解説された。この幼児向け図形ゲームについては、前年度の単著論文「結び目の数学教育について」(「数学教育研究」Vol.42(2013),141-146)や本年度の著書「結び目理論とゲーム」(河内明夫、岸本健吾、清水理佳共著、2013年出版)などで説明した。「領域点灯ゲーム」の応用研究として、結び目射影図の双対グラフにおいて、アルゴリズムに基づき、いろいろなスイッチの切り替を指定することにより、照明の明るさをいろいろ変えることができるスイッチシステム「量子スイッチ」の試作品を作ったが、この結び目理論を応用した「結び目パスワード」は、このスイッチシステムのアルゴリズムとも関係するが、特許申請を視野に研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ほぼ昨年予定の研究が達成されたのみならず、今年度の予定である、高齢者の視空間認識機能のリハビリテーションのためのソフトを搭載した機器(iPad4台)の作成や、それを基にした病院との協力の目途が立っているなどで、研究計画が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
大阪市立大学数学研究所において導入された、「領域選択による結び目解消操作」という、あるパターン変形により3次元の結び目を解く結び目解消操作を、それと同等な平面上の結び目射影図の変形に置き換えることにより登場した電子ゲームとして、「領域選択ゲーム」、「領域点灯ゲーム」がある。本研究では、岸本健吾(大阪工業大学講師、結び目理論、産業分野への技術移転担当)、金信泰造(大阪市立大学、教授、結び目理論)、田山育男(大阪市立大学、研究員、3次元多様体の数え上げ)、森内博正(近畿大学医学部講師、空間グラフ理論)、清水裡佳(群馬工業高等専門学校助教、結び目理論、産業分野への技術移転担当)を連携研究者として、これらの理論を深めるとともに、スイッチシステム「量子スイッチ」の理論を深めて、「結び目パスワード」のような、さらなる他技術分野への応用研究を提案して、結び目理論研究の産業分野への技術移転の礎を築く。また、「領域選択ゲーム」の高齢者の視空間認識機能のリハビリテーションのためのソフトを搭載した機器(iPad3台程度)を作成し、病院の協力を得て高齢患者に試用してもらう予定である。
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