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2012 年度 実施状況報告書

離散幾何学の新展開―有限群の形を見る

研究課題

研究課題/領域番号 24654016
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関慶應義塾大学

研究代表者

井関 裕靖  慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (90244409)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード離散集合 / 離散群
研究概要

本研究の目的は、離散的な集合に高次元的な構造を与えることにより、離散集合によりよい「形」を定め、離散集合を幾何学的に興味深い研究対象とすることを試み、とくにこれを有限群の研究に応用することであった。今年度は、本研究の出発点として、1次元的構造により形が決まってしまうような離散集合の高次元的構造を捉えることを試みた。
離散集合に1次元的な構造を与えることは、本質的にウェイトつきのグラフを考察することと同値である。群の有限表示から得られる有限グラフに対して、とくにそのラプラシアンの固有値に関する考察を行った。ランダムに群の有限表示が与えられたとき、決められた長さの語の集合に、与えられた関係式に現れる語から1次元的な構造を与えると、関係式が十分に多く与えられているときは、非常に高い確率で、ラプラシアンの固有値が1の近くに集中することを示すことができた。この場合、表示から得られる群も、非常に高い確率で、コホモロジー次元が 2 の群になってしまうため、ただちには高次元的な構造を読み取ることはできない。しかしながら、この結果から、非常に多くの有限表示群が、Hilbert空間、あるいは Lp 空間へ非自明な作用をもたないことを意味する、ランダム群の固定点定理を導くことができた。この結果から、ランダムに与えた有限表示から得られる群は、非常に高い確率で、Hilbert空間やLp空間へのよい埋め込みをもたないことが推測される。これは1次元的な構造から形が決まってしまうような離散集合でも、十分複雑な「形」をもちうることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の目標は、1次元的な構造から「形」が決まってしまうような離散集合の高次元的な構造を捉えることが目標であった。その「形」が意外にも複雑であることが明らかになってきてる。
その一方で、現在までのところ、高次元的な構造の幾つかの候補を見出すことはできたものの、それを完全に明確に捉えることはできていない。この結果を受けて、若干の方針の変更が必要になる可能性があるため、「おおむね順調」にとどめた。

今後の研究の推進方策

引き続き1次元的な構造から「形」が決まってしまうような離散集合と、その距離空間への埋め込みについて研究を行う。現在のところ、考察の主な対象はHilbert空間やLp空間への埋め込みであったが、これをより一般の非正曲率距離空間へと広げていく。
また、「形」の複雑さと、距離空間への埋め込み可能性との関係を数学的に明確に述べるために必要な種々の概念を確立する。その一例として、ラプラシアンの固有値やその非線形版とも言える不変量についての研究を進める。これらの成果を元に、高次元的な構造を捉えることを試みる。

次年度の研究費の使用計画

本研究は、幾何学はもとより、代数学、あるいは確率論などの幅広い分野に渡る横断的な研究である。そのため、研究代表者の専門である幾何学とは異なる分野に関する情報収集と深い理解を得るための図書・雑誌、および他の研究者との交流が不可欠である。図書、雑誌の購入のために物品費が、関連する様々な分野の研究者との研究討論を重ねるために国内・国外旅費が必要である。研究集会等での情報収集および資料整理等を関係者に依頼することもあるので、これに謝金等を使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Fixed-point property of random quotient by plain words2013

    • 著者名/発表者名
      Hiroyasu Izeki
    • 雑誌名

      Groups Geom. Dyn.

      巻: to appear ページ: to appear

    • 査読あり
  • [雑誌論文] N-step energy of maps and fixed-point property of random groups2012

    • 著者名/発表者名
      Hiroyasu Izeki, Takefumi Kondo, and Shin Nayatani
    • 雑誌名

      Groups Geom. Dyn.

      巻: 6 ページ: 701-736

    • DOI

      10.4171/GGD/171

    • 査読あり
  • [学会発表] Fixed-point property of random groups2012

    • 著者名/発表者名
      Hiroyasu Izeki
    • 学会等名
      Seminaire Geometrie et Dynamique
    • 発表場所
      Universite Lille 1
    • 年月日
      20120914-20120917
    • 招待講演
  • [学会発表] ランダム群のLp空間に対する固定点性質

    • 著者名/発表者名
      井関 裕靖
    • 学会等名
      福岡微分幾何学研究会
    • 発表場所
      福岡大学セミナーハウス
    • 招待講演
  • [学会発表] ランダム群のLp空間に対する固定点性質

    • 著者名/発表者名
      井関 裕靖
    • 学会等名
      名古屋大学幾何セミナー/Rigidty Seminar
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 招待講演
  • [学会発表] ランダム群のLp空間に対する固定点性質

    • 著者名/発表者名
      井関 裕靖
    • 学会等名
      愛媛大学数学談話会
    • 発表場所
      愛媛大学
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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