研究課題/領域番号 |
24654019
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 眞 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (70231602)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | モンテカルロ法 / 準モンテカルロ法 / 乱数 / WAFOM / (t,m,s)-net / 国際研究者交流(オーストリア) |
研究概要 |
研究代表者は、斎藤睦夫氏とKyle Matoba氏との共同研究により、準モンテカルロ法のための高速計算可能な指標を開発した。この指標はWalsh Figure of Merit(WAFOM)となづけた。有限体線形空間の部分空間Pを点集合として準モンテカルロ積分をするのだが、この際にPの直交空間から0を除いた各元Aにたいし、2をマイナスμ(A)乗した実数を総和としてWAFOM(P)は得られる。数値積分誤差は、点集合の指標であるWAFOM(P)と、非積分関数の暴れ具合をあらわすノルムとの積で抑えられることも証明した。 このようにして選ばれた点集合が実際にAsian Optionの数値計算において有効であることを示した。また、指導学生芳木との共同研究で、実際にこの指標が小さい(したがって数値積分において有利な)点集合が存在することを、確率的手法で証明した。この分野の権威であるオーストリアのHarald Niederreiter教授を招へいし、討論することにより、高速なt値計算アルゴリズムを得ることができた。また、指導学生鈴木航介氏との研究で、Niederreiter-Jingにより構成された(t,m,s)-ネットをinterlacingすることで、低WAFOM点集合が構成できることも示された。 モンテカルロ法に用いられる疑似乱数発生法で、GPUに適合した高速なMersenne Twister for GPUを斎藤睦夫氏と開発しホームページ上で公開した。論文はACM TOMS誌に受理されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
デジタルネットによって得られる点集合に対して、WAFOMという特性指標を導入した。この指標が小さければ、数値積分誤差がKoksma-Hlawka型の不等式で抑えられる。WAFOMは非常に高速に計算可能であるという点で、*-Discrepancyよりも優れた指標と言える。 従来の技法ではt値というものを使ってDiscrepancyを評価していたが、WAFOMはそれよりもはるかに高速に計算できる。また、t値は離散的な値しかとらないが、WAFOMは連続量であり、より詳細な特性指標であると考えられる。さらに、WAFOMの小さい点集合が常に存在することも証明でき、大きく進展した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、t値とWAFOMのどちらがすぐれた指標であるか、が問題となる。t値を高速に計算するアルゴリズムも開発したため、様々な点集合でこれらの指標を計算することができるようになった。あとは、様々な被積分関数に対し、数値計算誤差とこれらの指標との相関を調べることで、WAFOMがt値よりも有用な指標であると実験的に確かめられると期待している。点集合Pの直交空間において、μ1という距離による重み数え上げ多項式をつかうと、最低次の非ゼロ項の次数としてt値がわかる。μ∞という距離による重み数え上げ多項式の、変数に1/2を代入したものがWAFOMとなる。これらの重み数え上げ多項式の係数を実験的に観察し、係数の分布と数値積分誤差の関係を明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては、これらの研究成果を発表するために旅費が必要である。また、海外から研究者を招へいしたい。とくに、オーストリアHarald Niederreiter名誉教授、オーストラリアUNSW Josep Dick准教授、米国Stanford大学Art Owen教授らとの研究討論が重要となる。国内では、山形大学西村准教授、東工大二宮教授らとの研究討論が重要である。計算機実験をするために、プログラム開発のための謝金が必要である。また、実験用の計算機のために物品費が必要となる。
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