研究課題/領域番号 |
24654019
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松本 眞 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70231602)
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キーワード | モンテカルロ法 / 準モンテカルロ法 / 乱数 / WAFOM / (t,m,s)-net / 国際情報交換(オーストラリア) |
研究概要 |
研究代表者は、斎藤睦夫氏とKyle Matoba氏との共同研究により、準モンテカルロ法点集合のための高速計算可能な指標Walsh Figure of Merit(WAFOM)を開発した。(論文はMathematics of Computationに2014年に掲載。)芳木との共同研究で、実際にこの指標が小さい(したがって数値積分において有利な)点集合が存在することを、確率的手法で証明した。(論文は2013年にProceedings of MCQMCに掲載。) オーストラリアニューサウスウェールズ大学J. Dick氏との共同研究により、MacWilliams型反転公式を使ったデジタルネットのt値を高速に計算するアルゴリズムを開発した。論文はSIAM Journal of Discrete Mathematicsに掲載されている。このアルゴリズムを使い、多くの点集合に対してそのWAFOMとt値を計算し、どちらが準モンテカルロ積分誤差を小さくするかについての実験を行った。その結果、高階偏導関数のノルムが小さいような被積分関数に対しては、WAFOMで選ばれた点集合の方が、t値で選ばれた点集合よりも高速に真の積分値に収束することを確かめた。被積分関数を多項式関数、指数関数や三角関数などに選び実験すると、WAFOMを使って探索された点集合は、通常の準モンテカルロ法での収束の限界であるO(1/N)を超えた高速な収束を見せている(Nは点の個数)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
WAFOMは本研究により導入された、準モンテカルロ点集合の高速計算可能な新指標である。伝統的な性能指標であるt値を計算するアルゴリズムをDick氏と共同で開発したことにより、さまざまな点集合に対してt値とWAFOMを計算することが容易になった。そのため、さまざまな被積分関数に対して、どちらがよりよい指標であるかを数値実験で比べられるようになった。その結果、滑らかさの高い被積分関数に対しては、WAFOMの方がすぐれた指標であることが実験的に示された。この現象はWAFOMの数学的理論と合致しており、WAFOMが従来の準モンテカルロ積分を高速化することを強く示唆している。一方、不連続性の高い被積分関数に対してはt値を小さくするほうが有効であるという実験結果が示されている。WAFOMとt値の両方を小さくするような点集合を用いることにより、幅広い被積分関数に有効な点集合を探索することができ、実用段階の研究へと進みつつある。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね現在の研究方針を進める。WAFOM値の小さい点集合をランダムに探索する方法はすでに複数あり、その有効性を実験で確かめる。K.Suzukiにより、Niederreiter-Xing点集合からWAFOM値の小さい点集合を構成的に作る方法も与えられたので、これを実装して有効性を実験する。effective次元の低い被積分関数に対しては、適切な低次元projectionのWAFOM値が小さい点集合が有効と思われる。そのような点集合を探索する方法が、Dick weightに関するweight enumerator多項式を利用して与えられると考えられる。 マルコフ過程モンテカルロに準モンテカルロ法を導入する試みがさまざまに行われているが、WAFOMを用いた有効な構成法を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度中に行う予定の成果発表に伴う海外出張が翌年度に伸びたため。 2014年度の当初に成果発表に伴う海外出張に行う。国内の研究者を広島に招へいし研究を進めるほか、計算機実験をするためのパソコンならびに計算機実験をするものを雇用する。
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