研究課題/領域番号 |
24654022
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
國府 寛司 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50202057)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 力学系 / 時系列 / 不安定性 / 大域的構造 / 位相計算 / Morse分解 / 数理モデル / ノイズ |
研究概要 |
位相計算的方法に基づく力学系の時系列解析の方法の数学的な部分についての基礎付けとして,不安定なダイナミクスの検証を数学的に保証する定理を得た.その不安定ダイナミクスの情報としての Conley 指数を時系列データから求めるための数学的条件も与えた.また,Leslie model や結合写像系を例に取り,数理モデルから生成される時系列データの解析により,理論的結果の検証と問題点の確認をして,理論の補強と有用性の向上を目指す比較研究を行った.さらに,実際の時系列データに不可避的に含まれるノイズの影響を除去する方法について,簡単な数理的枠組みを用いてその正当性の検証を試みると共に,ノイズを含む具体的な数理的モデルで有用性を確認する数値実験を行った. いくつかの研究集会などの機会を利用して,気象学者の稲津將氏(北海道大学)らと研究打合せを行い,大気大循環の時系列データから位相計算的時系列解析の方法を用いて,気象の長周期変動の情報を取り出す可能性について議論した.また,数理生物学者の望月敦史氏(理研)が Bernold Fiedler 氏(ベルリン自由大学)と共同で行っているネットワーク・ダイナミクスの理論と我々の位相計算的時系列解析の方法を融合させる可能性を検討した.その有用性を実際に検証するために,サーカディアンリズムの遺伝子制御ネットワークの数理モデルを選んで,予備的数値研究を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的研究は概ね,予定していた通りの進捗状況である.また,位相計算的方法を適用する具体的な実データについても,気象学者および数理生物学者との研究打ち合わせを進めており,順調に研究が進められる見通しである.
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今後の研究の推進方策 |
第2年度は,前年度の理論的な成果を論文にまとめると共に,実際の時系列データ,特に気象学や生命科学,および新たな可能性として物質科学を取り上げ,それらに関する時系列データに対して,位相計算的時系列解析を適用して,どの程度までダイナミクスの情報を取り出せるかを調べる.1年間で研究を完成させるのは無理であるが,将来的な研究の進展の基礎となる結果を得るところまでには到達できると考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は特に気象学や生命科学,物質科学の研究者との研究打ち合わせが重要である.気象学関係では,7月にサンディエゴで開催される SIAM Annual Meeting で関連する研究者との研究打ち合わせをする予定である.また,生命科学・物質科学関係では,11月に RIMS 共同研究としてそれらの分野の研究者と集中的に議論する機会を設ける予定である.これらの研究討論・打合せのために,旅費および会議費を計上する.これら以外にも,国内外の関連する研究を行っている研究者を訪問または招聘して,研究の遂行に役立てる. このほかに,関連する研究情報を得るための図書費や必要に応じて計算機ソフトウェアを購入して,研究の遂行に活用する.
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