研究課題/領域番号 |
24654024
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
内田 雅之 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70280526)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 統計数学 / 確率微分方程式 |
研究概要 |
確率微分方程式によって定義されるエルゴード的拡散過程から得られる離散観測データに基づいて,ドリフトパラメータと拡散係数パラメータを推定する問題について研究を行った.これは拡散過程モデルのサンプリング問題とよばれる確率過程の統計における主要な研究分野の一つである.以後,データ数をn,刻み幅をhとする.先行研究からエルゴード的統計(n×h → ∞)において,バランス条件(n×(hのp乗) → 0, pは2以上の整数)が重要な役割を果たすことが知られている.毎秒データや毎分データのような高頻度データだけでなく,5分間隔程度の中頻度データ(n×(hのp乗) → 0, pは3以上の整数)に対しても理論的に良い性質をもつだけでなく,数値計算上もうまく機能する統計的推測手法の研究は,単に理論統計学としてだけでなく,実際にデータ解析を行う際に必要不可欠である.本研究では,中頻度データに基づいたドリフトパラメータと拡散係数パラメータの最小コントラスト型2段階推定法を提案し,その漸近的性質の考察を行った.また,非線形拡散過程モデルに対して,中頻度データ(h=5/390, nh=250)から得られる推定量の漸近的パフォーマンスを計算機シミュレーションにより検証し,提案された推定量が緩いバランス条件の下で,既存の推定量よりも良いパフォーマンスを示し,安定していることが確認できた.さらに,提案された推定法を中頻度データにおける拡散過程の判別分析に応用して,提案した判別ルールによる誤判別確率が漸近的に0になることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ数nと刻み幅hに対するバランス条件(n×(hのp乗) → 0, pは2以上の整数)の下で最小コントラスト型推定量の漸近的性質が解明され,コントラスト型推定理論が整備されたので,それを近似マルチンゲール推定関数に応用できると予想している.スコア関数と漸近同等な近似マルチンゲール関数を構成する必要があるが,伊藤-テイラー展開がそれを可能にするはずである.副産物として,中頻度データにおける拡散過程の判別分析法が開発可能であると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
中頻度データに基づく拡散過程の統計推測手法を確率微分方程式の非線形判別問題や検定問題に応用することを考える.先行研究で示された,データ数nと刻み幅hに対するバランス条件(n×(hの3乗) → 0)の下で機能する推定量を,オイラー・丸山近似に基づく擬似尤度関数にプラグインすることによって非線形判別関数を構成する.この判別関数を用いた判別ルールは,ドリフト項や拡散係数項の状況に依存せずに,極めて精度よく機能しているので,その非線形判別関数の漸近分布について解明する予定である.また,最小コントラスト型2段階推定量を用いた統計的仮説検定法の開発にも取り組む.
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次年度の研究費の使用計画 |
複数の国際学会への参加し,拡散過程のサンプリング問題についての研究発表および研究打ち合わせを行うため,研究費の半分以上は出張旅費として使用する予定である.また,大規模計算機シミュレーションを行う際に必要となる計算ソフトウェアを購入する予定である.
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