研究課題/領域番号 |
24654033
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
熊谷 隆 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (90234509)
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研究分担者 |
石毛 和弘 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90272020)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 非局所偏微分方程式 / 確率論 / 解析学 / 飛躍型確率過程 |
研究概要 |
1。熊谷は、一般の測度付き距離空間の上の広い範疇の飛躍型確率過程(非局所偏微分方程式)について、境界Harnack不等式が成り立つための十分条件を与えた。この条件は様々な例でチェック可能であり、論文では、例えばブラウン運動のsubordinationやLevy過程(局所部分がついていてもよい)、stable-like過程、フラクタル上の飛躍型確率過程、Schrodinger方程式の解、ドリフト付きの飛躍型確率過程など多様な具体例で境界Harnack不等式を証明している(本論文で初めて証明された例も多く含む)。この条件は摂動安定性を持った条件ではないが、幅広い範疇で境界Harnack不等式の証明を統一的に与えるという意味で当該研究に大きな進展をもたらす結果であると考えている。(K. Bogdan氏、M. Kwasnicki氏との共同研究であり、論文は最近雑誌にacceptされた。) 2。石毛は動的境界条件を含む非線形楕円型方程式について考察し、楕円型方程式論で用いられる非局所的評価を駆使し、大域解の存在および非存在に関する臨界指数を求めた。さらに、その大域解がポアソン核のように時間無限大で振る舞うことを証明した。(M. Fila氏、T. Kawakami氏との共同研究であり、論文は最近雑誌に掲載された。) 3。24年7月のBielefeldでの研究集会で、非局所偏微分方程式の研究者、飛躍型確率過程の研究者を交えた密な議論を行い、解のアプリオリ評価の現状と手法の整理をすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
境界Harnack不等式に関する統一的な結果を導く事ができたのは、大きな進展であった。実際、Bielefeldでの研究集会やBanach研究所(ポーランド)での研究集会などで、関連分野の研究者から当該研究に関する質問を受けるなど、手応えを感じている。また、Bielefeldでの研究集会においてL. Silvestreら非線形偏微分方程式の研究者と交流し、解のアプリオリ評価の現状と手法の整理を行う事ができた点も、今後の研究を進める上で重要な成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
海外研究者との交流を軸に、代表者・分担者が連絡を取りながら研究を進める。 1。6月下旬に上海で行われるcongressと、7月初旬に釜山で行われる研究集会の際に、共同研究者であるZ.Q. Chen氏、P. Kim氏と研究連絡を行い、それぞれの研究状況を報告し合うとともに、非線形非局所偏微分方程式の解のアプリオリ評価の可能性を模索する。 2。熊谷と石毛は、9月から12月中旬までMittag-Leffler研究所で行われる「Evolutionary Problems」に参加し、参加者と議論を行い、主催者のKinnunen氏らとともに共同研究を行う。Quasi-linearな非局所方程式における解のアプリオリ評価が一つのテーマとなる。Mittag-Leffler研究所滞在中の研究が、本年度の研究の中核をなすと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
1。研究の際必要な偏微分方程式論・確率論・数理物理学に関する知識の習得・応用のため、関連図書を購入する。また、関連するソフトウェアの購入も行う。 2。熊谷は、6月24-28日に上海で行われるPRIMA Congressと7月1-4日に釜山で行われるAsian Mathematical Conference 2013に出席し、海外共同研究者と情報交換を行うとともに、研究成果を発表する。(本経費による出張を予定している。) 3。上述したMittag-Leffler研究所でのプログラムについては、熊谷の分(9月下旬から10月初旬頃に出張予定)の渡航費・滞在費を本経費で賄う予定である。
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