研究課題/領域番号 |
24654035
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松崎 克彦 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80222298)
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キーワード | 複素解析 / 力学系 |
研究概要 |
ヘルダー連続微分をもつ円周の微分同相写像のタイヒミュラー空間を定義し,それに複素構造を導入した.円周上の向きを保つ自己同相写像の族を用いて,普遍タイヒミュラー空間という複素構造の変形の複素解析的パラメーター空間の部分空間を定義することに関してはこれまで多くの研究があった.この研究課題では,適切な構造を与えることも含めて上記の写像族に対してタイヒミュラー空間を定義ができた.そのためにまず,ヘルダー連続微分をもつ円周の微分同相写像を擬等角拡張の歪曲係数のノルムで特徴づけること,および,ベアス埋め込みによる正則2次微分のノルムで特徴づけることを行った.これらの空間の間には,タイヒミュラー射影,ベアス射影,ベアス埋め込みと呼ばれる写像が存在するが,新たに定義したノルムに関するバナッハ空間の複素構造に関して正則写像となることも証明している.さらにタイヒミュラー射影に関して等角重心写像から構成される切断があるが,微分同相写像のタイヒミュラー空間に制限しても等角重心写像から定義される写像が切断となることが証明できた.応用として,ヘルダー連続微分をもつ円周の微分同相写像群の各元のヘルダー定数から定まるある指数が一様に十分小さい正数で押さえられているならば実はメビウス変換群となるという剛性定理を証明した.本来の研究課題であるヘルダー連続微分をもつ円周の微分同相写像群のメビウス変換群への共役条件を与える問題については,ヘルダー連続性の指数が1/2より大きい場合には,必要十分条件として満足がいく結果が得られた.任意の正の指数に対してこれを拡張することが今後の課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としている研究の主要な部分については証明が完成した.既に得られた結果の一部をサーベイとして論文にまとめることができた.またいくつかの研究集会やセミナーで講演を行って多方面の研究者から関心をもってもらえた.
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今後の研究の推進方策 |
期待した結果がほぼ得られてきたので,今後はそれを早急に研究論文にまとめることに重点をおく.次はより改良された結果が証明できるように,研究連絡やセミナーでの講演等を積極的に行って関連する研究者の意見を取り入れて行く.
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次年度の研究費の使用計画 |
計算ソフトは大学で貸与できたため購入の必要がなくなった.国際研究集会の日程により予定していたものに参加しなかった. 外国人研究者を招聘して,研究成果の改良および応用について広く見解を求める.
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