研究課題/領域番号 |
24654035
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松崎 克彦 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80222298)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 複素解析 |
研究実績の概要 |
昨年度までの研究で,ヘルダー連続微分をもつ円周の微分同相写像群のメビウス変換群への共役問題について,ヘルダー連続性の指数が1/2より大きい場合には,タイヒミュラー空間のヴェイユ・ピーターソン計量に関する一様擬対称群の軌道の有界性を導く条件が共役を与える十分条件となることを証明した.微分同相写像群に関する仮定は非可換群であることが必要で,それは双曲型メビウス変換に共役である元を含んでいることを保証するためであった.証明では,双曲型メビウス変換の対称写像による共役の剛性がポイントである.今年度は,放物型メビウス変換の場合には上記の定理が成立しないことを示した.具体的には,与えられた指数のヘルダー連続微分可能性をもつ円周の微分同相写像で,放物型メビウス変換に微分同相写像で共役であるが,共役を与える写像として同じ regularity をもつものがとれない例を構成した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘルダー連続微分をもつ円周の微分同相写像群のメビウス変換群への共役問題について,対称写像による剛性定理を用いる議論は既にできている.本研究課題の議論で最も工夫がされた部分について,より本質的な理由を調べる追加的考察を行ったことは,研究の進展に寄与している.
|
今後の研究の推進方策 |
共役問題においてヘルダー連続性の指数が1/2より小さい場合には問題が難しく,より強い仮定のもとでしか結果が得られていない.今後は,この部分の改良をめざし,タイヒミュラー空間の「拡張された」ヴェイユ・ピーターソン計量に関する一様擬対称群の軌道の有界性を導く条件が共役を与える十分条件となることを証明したい.そのために必要なことは,この計量の凸性に関する議論であることはわかっている.その解析を中心に研究を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究集会で積極的に成果を発表することを延期したため出張旅費を使用しなかった.結果がよりよくなる可能性があるため,成果発表より研究内容の深化を優先した.また,予定していた研究者の招聘も同様の理由で延期した.
|
次年度使用額の使用計画 |
上記のように延期した研究集会での成果発表と,関連分野の研究者の招聘による研究課題の応用についての議論を行う.そのために旅費として使用する.
|