研究課題/領域番号 |
24654038
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 雅彦 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (70183035)
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キーワード | 相関関数 / 行列係数 |
研究概要 |
力学系理論に現れる相関関数と,ユニタリ表現論に現れる行列係数,それらの間に観察される類似性を追求することが本研究課題の目的であった.とくに,研究代表者が長年取り組んできた剛性問題において,それらの指数関数的減少性が重要な役割を果たすことがある.そこで剛性問題に対する応用を強く念頭に置きながら,これらふたつの概念に対する類似性を追求することを目指した. まず着手したのが,既存の剛性定理に対する新たな理解の獲得である.とくに研究代表者自身による,ある群作用に対する剛性定理を取り上げた.その別証明を与えつつ,上記の課題に対する理解を深めようと目論んでのことである.その別証明の試みのなかで,シュワルツ微分を再発見し,さらにはヒル方程式の高次元版を新たに発見した.研究課題からは離れるが,これらの発見自体,極めて重要なものであると考えている.例えば,これらの概念の応用として,KdV 方程式等の高次元化の可能性が示唆される,といった具合である.また,かつての証明においてはある事情から次元に関する技術的な仮定を置く必要があったが,それを取り除くことも可能であると期待している. ただし,研究代表者がかつて証明した剛性定理の別証明を完成させるには,あとひとつ克服しなければならない困難がある.群作用の固有不連続性に関するものである.適当な仮定のもと,固有不連続な群作用を少し摂動しても,固有不連続であることを示す必要がある.現在,この問題に着手している.それもほぼ完成に近づいている.これに成功すれば,ある群作用に対する剛性定理の新たな証明が完成する見込みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
そもそも,2,3年で完成させるには研究課題が大きすぎたのが最大の理由である.しかし,実現できればその影響は極めて大きいはずである.
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今後の研究の推進方策 |
まずは,群作用の固有不連続性に関する考察を完成させる.次いで,研究代表者自身によるある群作用に対する剛性定理に対し新たな証明を与える.そして,その上で,そこにおいて行列係数や相関関数の指数関数的減少の果たす役割を再考する.
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次年度の研究費の使用計画 |
群作用の固有不連続性の安定性に関する考察を平成25年度中に関せさせることができなかったため,次年度もそれに対する研究を続行する必要が生じたのが,理由である. 群作用の固有不連続性に関し知見を有する研究者と研究討論を行いながら,問題解決を図る.繰越した研究費はおもに,彼等との研究討論のための旅費として使用される予定である.
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