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2012 年度 実施状況報告書

量子二重対数関数の幾何学

研究課題

研究課題/領域番号 24654041
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関九州大学

研究代表者

樋上 和弘  九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (60262151)

研究分担者 村上 斉  東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (70192771)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード数理物理 / トポロジー / 双曲幾何 / クラスター代数
研究概要

量子二重対数関数は、可積分系の研究においてファデーエフによって導入された。近年、数理物理における様々な分野での重要性が増している。理想双曲四面体の体積が二重対数関数を用いて表されることから、結び目の量子不変量と双曲幾何との関係を示唆する「体積予想」と呼ばれる未解決問題の解決に向けて、量子二重対数関数の幾何学的な研究を行うことは大変重要であると思われる。一方、2000年以降活発に研究されているものにクラスター代数がある。これはフォミンとゼレヴィンスキーによって導入されたものであり、クラスター変数という生成元と、変異という操作を兼ね備えた可換環である。もともと表現論研究のために用いられたが、数学・物理の多彩な分野で用いられるようになっている。量子化されたクラスター代数も盛んに研究されているが、ここでは量子二重対数関数が重要な役割を担う。従って、量子二重対数関数の双曲幾何との関係を研究するために、量子クラスター代数は有用であると期待される。
研究初年度として、クラスター代数と双曲多様体との関連性、特にクラスター変数の幾何学的な解釈について研究を行った。簡単な双曲多様体として一点穴あきトーラスバンドルおよび2橋結び目の補空間を取り上げ、詳細な解析を行い、クラスター代数を用いた双曲構造の記述を試みた。その結果、クラスター変数を用いた複素体積の計算方法を導出することに成功した。とくに、クラスター変数の3次元双曲幾何における役割を明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

一点穴あきトーラスバンドル、及び二橋結び目の補空間について解析を進め、クラスター代数におけるクラスターx変数とy変数の双曲幾何における役割を明らかにした。特に、クラスターx変数を用いた複素体積の新しい計算方法を導出することに成功した。この成果を井上玲氏(連携研究者)との共著論文にまとめ、すでに投稿済みである。
この成果を一般に拡張して量子化を考察することにより、量子二重対数関数の幾何的な性質が量子クラスター代数をもちいて明らかになると期待できる。

今後の研究の推進方策

今年度の研究成果として、クラスターx変数およびy変数の双曲幾何における役割が明らかになった。簡単な双曲多様体である一点穴あきトーラスバンドル、および二橋結び目の補空間についての結果であるが、これを拡張することを試みる。具体的には以下のような研究をおこなう。
1. クラスター代数を用いて組み紐群の解であるR行列を構成する。クラスター変数と双曲幾何との関係を用いることによって、R行列についての新しい解釈を与える。
2. 1.で構成したR行列の量子化を行う。つまり、量子クラスター代数を用いてR行列を構成し、量子不変量を構成する。研究代表者が以前に構成した量子不変量との関連を調べ、双曲幾何学との関連性を確立する。一点穴あきトーラスバンドルや二橋結び目の補空間といった基本的な双曲多様体を例にとって、量子不変量と古典的な位相不変量との関係を調べる。
3. 量子二重対数関数はq級数としても書き表せる。複素体積との関係が予想されている色つきジョーンズ多項式と量子二重対数関数、クラスター代数との関連性を調べる。

次年度の研究費の使用計画

当初、計算機を購入して数値計算・数式処理を行いデータを収集する予定であったが、クラスター代数を用いた双曲幾何の記述が予定以上にうまく進んだため、その必要がなくなった。来年度以降、量子クラスター代数を用いた量子不変量の構成およびその漸近展開についての研究を効率よく行うに当たり、高速数式処理が必要となる。そのため、来年度研究費と併せて計算機を購入する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)

  • [雑誌論文] The coloured Jones polynomial, the Chern-Simons invariant, and the Reidemeister torsion of the figure-eight knot2013

    • 著者名/発表者名
      Hitoshi Murakami
    • 雑誌名

      Journal of Topology

      巻: 6 ページ: 193--216

    • DOI

      10.1112/jtopol/jts036

    • 査読あり
  • [雑誌論文] N=2 Moonshine2012

    • 著者名/発表者名
      T. Eguchi, K. Hikami
    • 雑誌名

      Physics Letters B

      巻: 717 ページ: 266--273

    • DOI

      10.1016/j.physletb.2012.09.037

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Twisted elliptic genus for K3 and Borcherds product2012

    • 著者名/発表者名
      T. Eguchi, K. Hikami
    • 雑誌名

      Letters in Mathematical Physics

      巻: 102 ページ: 203--222

    • DOI

      10.1007/s11005-012-0569-2

    • 査読あり
  • [学会発表] The colored Jones polynomial, the Chern-Simons invariant, and the Reidemeister torsion of a knot

    • 著者名/発表者名
      H. Murakami
    • 学会等名
      New Perspectives in Topological Field Theories
    • 発表場所
      Center for Mathematical Physics, Hamburg
    • 招待講演
  • [学会発表] Cluster algebra and complex volume of 2-bridge knots

    • 著者名/発表者名
      K. Hikami
    • 学会等名
      Facets of Integrability: Random Patterns, Stochastic Processes, Hydrodynamics, Gauge Theories and Condensed Matter Systems
    • 発表場所
      Simons Center for Geometry and Physics, USA
    • 招待講演
  • [学会発表] On the complex volume of knots

    • 著者名/発表者名
      K. Hikami
    • 学会等名
      Bethe Ansatz, Quantum Groups and Beyond
    • 発表場所
      数理解析研究所、京都大学
    • 招待講演
  • [学会発表] Cluster algebra and complex volume of 2-bridge knots

    • 著者名/発表者名
      R.Inoue
    • 学会等名
      Low Dimensional Topology and Number Theory V
    • 発表場所
      Soft Research Park Center, Fukuoka
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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