昨年度設計したパッケージに実装した2層CCDを製作し、その機械的熱的特性を評価し、またビームラインで陽子線を当てて実際に荷電粒子イベントをどの位除去できるかを調べた。 当該パッケージは非常に薄いセラミック基板にCCDチップと信号配線用のピンを実装している為、パッケージを電子回路基板に実装する時や冷却する時に機械的熱的ストレスがかかる事になる。この影響を最初にメカニカルダミーで調査した結果、パッケージを固定するICソケットがピンを固定する力による歪みで基板が割れてしまうことが分かった。これを解消する為、セラミック基板からはごく細い導線で信号を引き出し、基板を機械的に支えるアルミ板(メカニカルサポートと呼ぶ)に別途設けたピンへとつなぐことで応力が基板へ直接かからない構造に改修した。この結果、基板への取り付けおよび熱サイクルを経ても基板割れは発生せず、実験室レベルでの試験に耐えるパッケージが完成した。パッケージ冷却はメカニカルサポート経由で行い、-120℃に至る良好な冷却性能を得た。 荷電粒子イベント除去試験は、放射線医学総合研究所の重粒子加速器HIMACを用いて230MeVの陽子線をあて、これが作る両CCDへの痕跡が表裏で機械的な対応をどれだけ付けられるかという基礎的な評価を行った。その結果、まずこの線質では両CCDの相関を取るまでもなく波高値およびイベントグレード(各痕跡の幾何学的形状)でほとんどの粒子線イベントが弁別できてしまうという結果になったが、それには構わず表素子の各イベントに対して裏素子の最も近いイベントまでの距離の分布を評価したところ、およそ1割だけが単純除去可能という結果になった。一方おなじ条件のシミュレーションではほとんどのイベントが除去可能という結果を得た。この実測とシミュレーションの食い違いの理解と、実環境での除去率の大幅向上方法の開発が次への課題である。
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