研究課題
将来のスペース太陽観測に必須となる、サブ秒角望遠鏡を持つWolter X線ミラーを、ナノ加工技術を用いた表面創成と、SPring-8で得られるコヒーレントX線を用いた精密形状計測、によって実現することをめざし、そのための基幹技術の獲得を進めている。計画初年度(全体計画2年)は、試作ミラーの表面形状のパラメータを決定し、また、SPring-8のX線ビームに対してミラーのアライメントを取るためのミラーピース上の切り欠き構造等を、阪大グループと協力して決定した。これと並行して、SPring-8でのX線計測に向けて試作ミラー表面の加工残差に対する条件を検討し、テストピースを用いて研磨条件決定のためのデータを得た。計画最終年度である今年度は、試作ミラーの研磨と金属(白金)コーティングを行ない、SPring-8 BL29XULのコヒーレントX線ビームラインを用いて同ミラーのX線結像性能等を評価した。結像性能は期待したものではなかったが、この評価計測を通じて、研磨とコーティングについて今後改善が必要な項目を洗い出すことができた。なかでも、研磨加工で十分取り除けていなかった、1 mm程度のスケールでの形状誤差リップル(10 nm P-V程度)にともなうスロープ誤差の結像性能劣化への寄与が大きく、このことが原因で、平行ビームに対してミラーの面内方向へは5 μm程度にまで集光できている(角度スケールで0.3秒角以下)一方、垂直方向への集光は満足に行なわれていないことを突き止めた。本研究を通じて、今後のサブ秒角Wolterミラーの表面創成に向けた技術課題を特定することができ、このことを踏まえた研磨工程の改良検討などを現在進めている。
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Proc. SPIE
巻: 8862 ページ: 88620T (12pp)
10.1117/12.2024753
http://www.ir.isas.jaxa.jp/sss14/files/SSS14_POSTER_Program_20140103.pdf