研究課題/領域番号 |
24654054
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柏木 茂 東北大学, 電子光理学研究センター, 准教授 (60329133)
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研究分担者 |
日出 富士雄 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (60292207)
栗木 雅夫 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (80321537)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高品質電子ビーム / 電子銃 / 扁平ビーム |
研究概要 |
今年度は、高品質電子ビーム生成に用いる高周波電子銃(RF電子銃)の基本設計と高エネルギー加速器研究機構の超電導過疎空洞試験施設(KEK-STF)での扁平ビーム生成実験のための理論考察を行った。高周波空洞の構造は、超高真空を達成するために真空排気ポートなどが取付け易いDAW(Disk-And-Washer)構造をベースに電磁場解析コードであるHFSSを使い、空洞形状の検討を進めた。加速周波数はSバンド(2856MHz)とし、DiskとWasherサポート部の構造を決めた後、排気ポートのサイズや配置を変えながら空洞パラメータの最適化を試みた。排気ポートは空洞パラメータに大きく寄与はしないが、十分な真空コンダクタンスを得ようとするとQ値が低下してしまうなどの問題が生じる事が分かった。今後、アルミ製の試験空洞を製作し高周波特性を詳細に調べる予定である。また、KEK-STFでの扁平ビーム生成実験に関する考察では、RF電子銃とソレノイド電磁石の組み合わせとスキュー四極電磁石を使い、水平-垂直エミッタンス交換(変換)をすることにより扁平ビームを作り出すパラメータサーチを行った。ソレノイドで水平垂直の運動量結合を作り出し、スキュー四極電磁石で相関を取り除くことにより、水平・垂直比が50以上のビームを作り出せる事をシミュレーションにより確認した。扁平率250のビームを作り出す事を目標にしているが、ビームの初期条件を変えることにより水平・垂直比が大きく異なるということが考察から分かったので、初期条件(カソード上でのレーザースポットサイズや強度分布)の最適化により目標を達成できると考えている。また、金属スリットを用いてRF電子銃から生成されたビームの水平垂直運動量結合を検証する測定システムの設計も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度中にDAW構造の高周波電子銃空洞の基本設計において、空洞形状の最適化や排気ポートの配置・サイズの最適化などを詳細に行ったため、アルミ製の試作機を製作するに至らなかった。しかしながら、24年度中に行った電磁場計算から、加速モードとセル間の結合モードの両方を考慮しWasher部のサポートをどのようにすべきか、という方針を固める事ができたので、概ね高周波空洞製作に関しては順調に進んでいる。また、KEK-STFで計画している扁平ビーム生成実験に向けたシミュレーションによる考察も順調に進んでおり、電子ビームの初期条件を最適化しなくても扁平率25を達成できる事が分かった。高周波電子銃空洞設計には時間をかけているが、扁平ビーム生成実験については当初予定よりも若干進んでいる。研究全体としてはほぼ予定通りに進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、24年度に行ったDAW構造の高周波電子銃空洞の設計を最終決定し、アルミ試験空洞の製作に取り掛かる。KEK-STFでの扁平ビーム生成実験に関しては、まず最初にRF電子銃とソレノイド電磁石の組み合わせにより水平・垂直運動量結合を作り出せているかを検証する。その後、扁平ビーム生成するためのビームライン設計を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、DAW構造の高周波空洞の詳細な設計に十分な時間を費やしたため試験空洞製作費が未使用額となったが、平成25年度請求額と合わせ平成25年度の研究遂行に使用する予定である。その他、平成25年度請求額はKEK-STFでのビーム実験を行うための旅費や実験の際にビーム計測に使用する消耗品などを購入する予定である。また、水平・垂直運動量結合を測定するのに用いる金属スリットや蛍光スクリーンの購入にも研究費を使用する予定である。
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