研究課題/領域番号 |
24654056
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 肇 東北大学, 電子光理学研究センター, 教授 (20178982)
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研究分担者 |
宮部 学 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (10613672)
村松 憲仁 東北大学, 電子光理学研究センター, 准教授 (40397766)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 逆コンプトン散乱 / レーザー電子光 / X-FELO |
研究概要 |
この研究は、8GeVのSPring-8蓄積電子とそこから得られる強力なX線領域の放射光との逆コンプトン散乱によるGeV領域の単色光子ビーム実用化のための基礎研究である。 平成24年度は、逆コンプトン散乱によるGeV領域のガンマ線を検出するための検出器を制作し、これをテストした。検出器は直径80mm長さ300mmの大型BGOクリスタル1本とこれに装着する光電子増倍管1本である(BGOB1)。テストは、新たに設置されたレーザー電子光ビームラインLEPS2のコミッショニングを利用して行われ、8GeV周回電子のSPring-8内残留ガスによる制動輻射光子(最高エネルギーは8GeV)と2.4GeVレーザー電子光のエネルギースペクトルを同時に見事に捉えることができた。 当初の予定では、高エネルギーγ線の検出器としては22mm角の小さいシンチレーションクリスタルを3x3のマトリクスに組み上げて一つの検出器として使用することになっていた。しかし、クリスタルの価格高騰等によってこれを断念せざるを得なかった。これに代わり大型のクリスタル1本で検出器の中心部分を構成することとした。高エネルギーγ線のエネルギー測定そのものについてはBGOB1には大きな問題はないが、γ線のプロファイル測定については別の検出器を加える必要がある。しかし、本研究の第一の目標は、放射光と周回電子との逆コンプトン散乱を捉えることであり、当面は現検出器BGOB1は十分な威力を発揮すると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずは、レーザー電子光ビームラインLEPS2において、本研究で制作した検出器BGOB1を用いてレーザー光と8GeV周回電子の逆コンプトン光を検出し、同時にSPring-8内残留ガスによる制動輻射光を観測できたことは本研究の第一歩である。次年度に挑戦する放射光と電子との逆コンプトン散乱の実験では、今回観測された制動輻射光と同じスペクトルが見えるはずなので、これを参考背景スペクトルとして利用できる。 当初予定していたものとは異なる構造の高エネルギーγ線検出器BGOB1を使用することになったが、検出器本体であるシンチレーションクリスタルが1本のために、γ線のエネルギー測定は寧ろ簡単になった。当初計画の9本のクリスタルを使用する場合にはそれらのエネルギー校正を別途行う必要があった。 本研究の第一目標は、放射光と周回電子との逆コンプトン散乱した高エネルギーγ線を検出することなので、所期の目的は十分に達成できる筈である。
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今後の研究の推進方策 |
Bragg反射ミラーAl203を用いて、アンジュレータからの放射光を180度反射させ、8GeV周回電子との逆コンプトン散乱を起こすことを目指す。この研究は、SPring-8加速器部門長の大熊氏の研究グループとの共同研究として推進し、本研究グループは、8GeV周回電子と放射光との逆コンプトン散乱で放出される高エネルギーγ線の検出を受け持つ。SPring-8に設置されているビーム診断用ビームライン光源のアンジュレータを用いて実験が行われる予定である。まずは、SPring-8の蓄積電流を1/100以下にセットし、Bragg反射ミラーがアンジュレータからの放射光に耐えられるかどうかが一つの鍵になる。ミラーの背面に前年度制作した検出器BGOB1を設置し、高エネルギーγ線を捉える。実際に放射光の逆コンプトン散乱が起こったかどうかは、1/kのエネルギー分布をもつガス制動輻射の参考背景スペクトルの上に高エネルギー成分が現れるかどうかを見ることになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は当初計画より減額となっているが、これは当初計画していたガンマ線検出器の構造を変更したことにより、今年度前倒しで研究費を使用したことによる。平成25年度請求額は、この減額分を考慮した上で本研究に必要な経費として使用する予定である。
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