研究課題/領域番号 |
24654060
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関谷 洋之 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (90402768)
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研究分担者 |
岩田 圭弘 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 大洗研究開発センター, 研究員 (20568191)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / レーザーイオン化 / ラドン |
研究概要 |
キセノン(Xe)ガスにレーザーを照射し、不純物ラドン(Rn)のみを選択的にイオン化し、除去する手法を確立するのが本研究の目的であるが、200nm以下の真空紫外(VUV)光が必要であるため、共鳴イオン化を高効率に行うための高出力かつ狭線幅のVUV光を安定に生成するパルスレーザーの開発が最初の課題である。今年度は必要な波長の光源開発を行った。 Xeのイオン化には、s軌道経由の178.6nmを使用するスキームと、d軌道経由の145.2nmを使用するスキームが考えられる。まずは、クリプトン(Kr)ガスセルを用いた共鳴四波混合による178.6nmの発生を試験し、生成方法、検出方法を技術的に確立すると同時に4μJ/pulseの強度を確認した。 さて、共鳴励起先としてd軌道を使用した方が共鳴イオン化段数が少なくて済むため、イオン化断面積が二桁以上高くなるので、望ましい。まず、145.2nmの光を178.6nmと同様の手法によって発生させた。ところが、Krの屈折率からは位相のミスマッチがおこり、Krガスセル中で発生した光が減衰してしまうことが確認された。Krの圧力を0.3atmまで下げることによって、145.2nm自体の発生は確認できたが、強度は不十分なものであった。 そこで、Krのガスセルに屈折率の小さいXeを混ぜることで位相整合を行い、VUV光の出力を向上させる手法を試みた。KrとXeの混合比を変えながら出力の最適化を行い、結果Xe/Kr ~ 0.073 と調整したときに、7μJ/pulseの145.2nmの光出力を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、178.6nmの光源を実現した段階で、レーザー設備がある、原子力研究開発機構大洗研究センター(原研)のラドン線源を持ち込んで、ラドンの共鳴イオン化の実験を行う予定であった。しかし、原研内へ外部から新たに非密封放射線源を持ち込むことが法令上非常に難しく、200Bqのラジウム線源1個ですら、地域住民への説明会を開かねばならない等、すぐには実現できないことが判明した。 したがって、当面、ラドンの共鳴イオン化自体を行わず、その分、レーザー光源開発に専念することにした。その結果、高効率で共鳴イオン化が期待できる145.2nmの光源の実現の目途が立ち、今後のラドンの共鳴イオン化試験に期待が持てる状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は145.2nmの光の高出力化、狭線幅化、安定化が主要な開発項目である。高出力化については、位相整合の最適化をさらに進め、一桁程度の向上を目指す。 共鳴励起に必要なVUV光密度はRnの吸収幅Δν[GHz]に反比例し10/Δν[μJ/cm2]程度である。吸収幅は主にRn原子の速度のばらつきによるドップラー幅およびパルスレーザー線幅で決まる。したがって、Xeのガス循環ラインシステムの流速の最適化およびパルスレーザーの線幅を狭線幅化が直接に有効である。後者に関しては、レザーパルス幅5nsに対するフーリエ限界の線幅(約90nm)を目指し、最終的にΔν~1[GHz]を実現したい。 波長の安定性については、波長変換に光パラメトリック発振(OPO)をもちいると波長がドリフトすることが分かっているため、共振器を組まない光学系を構成したうえで、上記の高出力化、狭線化を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的には、VUV光源の開発に必要な物品の購入費として使用する。非線形結晶やガス系、真空系の配管部品や計測機器に充てる。また、線源として扱われないようなラドン源を用意することを考えている。具体的には神岡坑内のラドン濃度の高い空気を圧縮して乾燥、活性炭に吸着するための器具の購入を計画している。
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