研究課題/領域番号 |
24654061
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 真人 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (40242094)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 宇宙線核種 / 宇宙線起源 / 銀河内宇宙線 / 宇宙線スペクトル / 超新星 / 宇宙線伝播 / 直接チェレンコフ光 / 宇宙線加速 |
研究概要 |
10**14eV から 10**15eV の 1 次宇宙線が大気中で 2 次粒子生成する前に放射する大気チェレンコフ光 (“直接チェレンコフ光”) を高精度で複眼撮像し、1 次宇宙線ごと核種を精密に測定する。地上検出のみ可能である 10**14eV 以上の 1 次宇宙線核種成分の測定は宇宙線物理における積年の重大な課題であった。そのエネルギー遷移は宇宙線起源の問題にも強く関連する。現状、空気シャワー実験の核種同定の結果は互いに矛盾し、従来の測定法の困難さを示唆している。直接チェレンコフ光の発光量は粒子の電荷数Z の2 乗に比例するため、その測光は、原理的な不定性がない核種同定となる。本計画では、高分解能と正確な方向決定により、この優れた核種同定法を実証し、knee の物理起源決定を目指す。 DC 法の利点を最大化するため系統誤差を極力廃した実験とする。高解像度化による DC と EASとの分離が本研究の鍵である。まず、その性能調査のため、さらなる高解像の撮像を行う。平成 24 年度 (H24) には、広視野と高解像を両立した Ashra 望遠鏡を基に、従来の IATC と同様の主光線軸付近の狭い視野に限って光学調整し、1 分 (=0.015度) 以下の優れた解像度を実現する撮像装置を開発した。ラボにて組み上げて試験し、良好な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で用いられる集光器はAshra-1実験の1台の集光光学系であり、光学焦点面以降の読み出し部のみ、本研究用に開発した近軸高精細の自己トリガー可能な撮像センサーを用いる。Ashra-1集光器は、ハワイマウナロアにおける好天候の地の利を活かして、高い稼働率を実現し、H25年3月までで、延べ約5600時間 以上の観測時間を蓄積し順調に稼働している。本研究にてフラットパネル型多陽極光電子増倍管を用いたトリガー判定を新たに導入し、既にAshra-1のため開発された光電撮像管を組み合わせて、本研究に特化したトリガー読み出し系が開発された。ラボ試験の結果、Ashra-1の1/10の視野である全角4度の視野に限り、近軸光学系として焦点距離を再調整することで、1分を切る解像度が得られることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
広視野と高解像を両立した Ashra-1集光器にマウントし、従来の IATC と同様の主光線軸付近の狭い視野に限って光学調整することで、1 分 (=0.015度) 以下の優れた解像度をを例証する。その上で、先に出版されている100-200TeV にて、H.E.S.S. の鉄流量測定 を同等の統計数で比較し、本研究の優位性を明示する。そこで、理解された系統誤差に見合う統計精度を得るよう、視野を段階的に広げて検出効率を上げる。より高いエネルギー領域での高精度の核種同定観測を試み、成分ごとのスペクトルを導出し、予想モデルと比較検定する可能性を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ハワイマウナロアにおける設置調整のため渡航する。そのため旅費を使用する。 その後、10月から観測を開始してデータを蓄積する。そのため旅費、観測地往復の交通費、データ格納用のPCとハードディスクを使用する。データを輸送したり、モニターするため、ネットワーク等の通信費等が必要となる。
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