研究課題/領域番号 |
24654062
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
谷本 盛光 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90108366)
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研究分担者 |
淺賀 岳彦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70419993)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ステライルニュートリノ / ニュートリノ混合 / 大気ニュートリノ |
研究概要 |
素粒子の標準理論では、三種類の左巻のニュートリノが存在するが、これらは荷電レプトンと対をなし、SU(2)ゲージ対称性の二重項を構成している。しかしながら、理論的には荷電レプトンと対をなさないゲージ一重項の存在が許される。その典型は、質量の巨大な右巻ニュートリノであるが、質量がKeVからMeVにある軽い右巻ニュートリノの存在も考えられている。これは荷電レプトン等と直接相互作用しないためステライルニュートリノと呼ばれる。 ステライルニュートリノの質量・混合の生成機構を理論的に解明し、加速器ニュートリノと宇宙ニュートリノの物理にかかわる新しい現象論を展開することが本研究の目的である。 質量の巨大な右巻ニュートリノが第2、3世代のみであり、第1世代の右巻ニュートリノがKeV程度の質量をもつ極めて軽い粒子の場合、第1世代の右巻ニュートリノはステライルニュートリノとなる。そして第1世代のアクティブニュートリノは第2、第3世代のアクティブニュートリノに比べて極めて軽い。このケースは余剰次元のモデルによって実現可能である。このフレームワークで、現在測定されているニュートリノ質量、ニュートリノ混合が簡単な質量行列の構造から導かれることを示した。最小限のパラメータで実験値を説明するため、質量行列の行列要素にゼロを導入(Texture Zero)することによりMinimal Textureを求めることに成功した。とりわけ、混合角θ13がカビボ角と密接に関係することを示した。また、混合角θ12を精密に予言し、かつレプトンのCP対称性の破れの大きさを予言し、将来の実験でモデルのフレームワークがテストできることを示した。 この研究は、ステライルニュートリノが存在した場合、現在のニュートリノ実験の結果を明快なフレームワークで説明できることを示した点において重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ステライルニュートリノの質量・混合の生成機構を理論的に解明し、加速器ニュートリノと宇宙ニュートリノの物理にかかわる新しい現象論を展開することが本研究の目的である。 これまでの研究では、ステライルニュートリノの存在のもとでアクティブニュートリノの質量と大きなフレーバー混合の現象論を展開し、最小限のパラメータで実験値を説明することに成功した。また、混合角θ12を精密に予言し、かつレプトンのCP対称性の破れの大きさを予言し、将来の実験でモデルのフレームワークがテストできることを示した。このことは本研究目標の第一ステップをすすめたものである。 また、大気ニュートリノでのステライルニュートリノの現象論は、新しいニュートリノ現象論を切り拓くものである。 以上のことから判断して、「研究目的」の達成度は「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
ステライルニュートリノが小さな質量をもつ理由として、以下の可能性を考える。(1)右巻ニュートリノが、フレーバー対称性によって質量を持つことが禁止されている。(2) 右巻ニュートリノが、新機構により巨大な質量を持つ仲間から分離し、小さな質量が実現している。 (1)の課題を解くにあたって、私たちにはフレーバー対称性の研究の実績に裏打ちされたノウハウがある。この対称性によって、ゲージ一重項ニュートリノの大きな質量が禁止される可能性を探る。 (2)の課題を解くヒントとして、Kusenko-Takahashi-Yanagidaによるスプリットシーソー機構という提案がある。このアイデアは余剰次元を活用するものであるが、余剰次元のモデル化については多様性があるため、様々なニュートリノ質量生成機構が期待される。 これらのステライルニュートリノ生成機構のもとで、ニュートリノ現象論を展開するが、海外から関連する研究者を招聘し研究討議を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定していた物品が3月末までに納入が間に合わなかったことによって「次年度使用額」が生じたものである。 4月以降、予定していた物品を早急に購入し、研究計画に支障のでないようにする計画である。
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