研究課題/領域番号 |
24654066
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
民井 淳 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (20302804)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 不安定核 / インプラント標的 / 軽イオン核反応 / 核構造 |
研究概要 |
本計画の目的である不安定核停止標的システムを製作するための事前調査、検討と議論、設計作業とシステムに使用するホスト標的物質のサンプル製作およびその資料分析を行った。計画の基礎的準備を行っている段階で、学術的な成果はまだ出ていない。 標的ホスト物質に対して10万~100万分の1の量で埋め込まれる不安定核を標的とする実験を実現するためには、ホスト物質の純度を高くして不純物濃度を下げることが重要である。性能評価のため、ホスト物質として有力な炭素12アイソトープ濃縮薄膜(濃縮度99.95%)の標的サンプルを製作した。 また、システム設計の事前調査として、長寿命不安定核を含むアイソトープ標的製作を行っている米国オークリッジ研究所の現地調査、アイソトープ分離を行っている東北大学の有識者との議論、アイソトープ物質製作をおよび元素分析を行っている南アフリカ国アイテンバ研究所の現地調査を行った。 アイテンバ研究所では製作した炭素12濃縮薄膜の性能試験を、ラザフォード後方散乱、マイクロピクシー、陽子散乱の3つの手法を用いて行った。試験の結果、炭素12のアイソトープ濃縮による炭素13の軽減は期待通りであった。不純物濃度もかなり良い値ではあるが、部分的にアルミニウムが10万分の1、カルシウム、クロム、タングステンが1000万分の2の含有量で含まれることが分かった。アルミニウムの含有量を減らす工夫をする必要があると思われる。 一方で事前調査をもとにシステム全系の概念設計を行い、実際に製作を進めるための図面作成と業者とのコンタクトなどの準備を部分的に進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、本年度標的システムの製作とその初期試験を行うことになっていたが、この計画を全て達成するには至っていない。 理由として標的ホスト物質製作とその試験に労力を要したことと、システム設計の事前調査をもとに全系の概念設計を改善する作業に予定以上の時間を要していることがある。ただし根本的な問題が発生したわけではなく、有望な標的ホスト物質の製作に成功し、物質の純度の情報も得られたため、今後引き続き段階的に作業を進められる予定である。 一方で大阪大学核物理研究センターにビームを用いた開発を実施するためのプロポーザルを提出し、不安定核停止標的プロジェクトとしての課題採択と、開発ビームタイムの採択を得ることができた。研究の重要性について課題採択委員会の有識者を納得させることができ、加速器によるビームを用いたシステム試験にとりかかる許可を得ることができた意義は大きい。今後の開発を進めていく下準備の整備が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
停止標的のシステム製作が次に進めるべき課題である。 他施設の調査から、開発すべき本システムの概要はマイクロピクシー装置に概念的に近いことが分かったため、既存のマイクロピクシー装置を参考にシステム設計の改良と製作を行う。さらに放射線医学総合研究所および日本原子力研究開発機構高崎研究所にある装置の調査を行った後、装置の製作を進める。 装置製作後、線源によるアルファ粒子の埋め込み(インプラント)と位置検出を行った後、安定核のビームを照射する試験を行う。試験の目的は、標的核種のインプラント位置制御、再現性、インプラントした物資の分布とその安定性のテストを行うことである。 平行して、米国ノートルダム大学のグループと共同で進めている計画により、ベリリウムホスト物質にネオン22原子をインプラントした標的を、タンデム加速器を用いて製作し、大阪大学核物理研究センターにてビーム照射する試験を行う予定である。局所領域に物質を埋め込む本計画とは異なり、この標的では短寿命不安定核への応用は期待できないが、インプラント標的を用いた核反応実験の実現性については試験を進めることができる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に引き続き、次年度では不安定核停止標的システムの設計を進め、システムの主要部分を製作する。インプラントホスト標的物質については本年度にサンプルを製作した。次年度では主に真空容器、標的駆動機構、ビーム位置測定機構の製作を行う。 また、より良い設計および製作を行うための調査として、放射線医学総合研究所および原子力機構高崎研究所他を訪問し現場の研究者との議論および情報交換を行う。 計画内容について国際会議等で発表し、海外の研究者との議論や今後の計画の発展に向けたアイデアの議論を行う。
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