研究課題/領域番号 |
24654066
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
民井 淳 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (20302804)
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キーワード | 不安定核 / インプラント標的 / 軽イオン核反応 / 核構造 |
研究概要 |
本計画の目的である不安定核停止標的システムを製作に関し、昨年度達成したホスト標的物質のサンプル製作と試料分析の結果を踏まえ、標的の位置制御するためのシステムの製作と安定核埋め込み標的を用いたテスト実験を行った。標的の位置制御システムにはステッピングモーターとベローズを用いた3軸制御システムを採用し、詳細設計を詰めて製作を行った。当初目標である3軸での100マイクロメートルの位置精度に対して、駆動試験では20マイクロメートル程度の精度を達成しており、十分に目標を達成している。 位置制御システム開発と平行して、安定核であるネオン22核をベリリウム標的に埋め込んだ試料を米国ノートルダム大学、ドイツ国ボフム大学との共同で開発し、核物理研究センターにてリチウム6ビームを照射する実験を行った。 リチウム6の弾性散乱反応についてクリアにピークを見ることに成功した。しかし一方で、アルファ遷移反応についてはピークを観測できなかった。これは、比較的高いビームエネルギー(核子あたり50 Mev)を用いたため、散乱断面積が小さくなってしまったことが原因と考えている。今後の実験ではこの点の改善を計画している。 また、不安定核埋め込み標的の実験に必須である大強度ビームによる前方角散乱測定を実現するため、核物理研究センターの予算を獲得し、グランドライデン前方モードビームラインの設計、製作を行った。このビームラインは2014年3月に完成し、現在最終調整と使用開始に向けた試験を進めようとしている。 一方で、不安定核埋め込みを行う候補として理化学研究所RIBF施設のSLOWRI装置、および米国アルゴンヌ国立研究所のCARIBUイオン源を選定し、それぞれの施設を訪問して装置の視察を行うと共に、それぞれのプロジェクトリーダーと今後の計画と共同実験に関する相談を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
標的ホスト物質製作とその試験、システムの概念設計を改善する作業に時間を要した昨年度の遅れに伴い、本年度も初期の予定に比べてやや遅れている。しかし、当初目標の標的システム製作と安定核埋め込み標的を用いた散乱実験の最初実験に成功したため、最も重要な部分はよく進展している。 安定核埋め込み標的による試験では弾性散乱の測定に成功したが、アルファ遷移反応については観測ができなかったため、今後の装置改良に関する有用な情報が得られた。ビームエネルギーを下げた実験の実現と、よりバックグラウンドを減らしていくための装置の改良が必要とされる。 平行して不安定核ビーム埋め込みに向けた議論を進行しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
停止標的のシステム改良と不安定核埋め込みテストが次に進めるべき課題である。 停止標的の試験として、バンデグラフ加速器を用いた重陽子ビーム埋め込みを用いる方式を検討している。この方法により埋め込んだ重陽子とエネルギー上げて照射した重陽子ビームとの反応を測定することが可能になる。またバンデグラフ加速器は比較的時間的制約が少なくビーム利用をできるため、装置改良のための試行実験として柔軟な対応ができると期待できる。また同反応により少ない埋め込み量の測定まで可能になることが見込まれるため、今後の強度の低い不安定核埋め込み標的実現に向けた試験過程として優れている。 平行して不安定核の埋め込みを行う候補である理化学研究所RIBF施設のSLOWRI装置の使用に関する相談を進め、埋め込み方法の計画とその準備作業を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費として使用する計画を検討していたが、今年度分としては必要がなくなったため次年度使用として繰り越すこととした。 成果発表旅費として使用する。
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