研究課題/領域番号 |
24654066
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
民井 淳 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (20302804)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 不安定核停止標的 / インプラント標的 / 核反応 |
研究実績の概要 |
本計画の目的である不安定核停止標的システムの実現性を安定核にて実証する実験を、大阪大学バンデグラフ加速器施設を用いて行った。1MeVのエネルギー、直径1mmの重陽子ビームを銅、金、銀の薄膜標的に照射することにより重陽子のインプラントを行った。ビーム強度は1μA、時間は1回1時間程度、インプラント深さは5-6μmである。続いてインプラント標的に 2 MeVに加速した重陽子ビームを照射し、重陽子-重陽子の核反応により生成される陽子をシリコン検出器を用いて検出した。 散乱角0度での測定により、バックグラウンドを抑えて主反応のピークを測定することに成功した。局所インプラント標的による核反応測定が可能であることの実証に初めて成功した。極めて画期的な成果である。得られたイベント量は、既知の散乱断面積から予測される量と比較して5-50%であった。銅標的での5%の値は、インプラントにより標的が破損している状況が見られたため、インプラント核が真空中に放出されたと考えられる。金の標的で50%の値がえられた。減少分は、金内部での重水素の拡散による効果が見えていると考えられ、既知の拡散係数から予測される拡散量と概算で一致する。今後実験状況の向上により、拡散測定の精度向上を行う計画である。また、インプラント標的を重くすることで拡散効果が無視できる様に測定の向上を測る。 第一段階である安定核インプラント標的での散乱実験の実証に成功したため、次の段階である不安定核インプラント標的による散乱測定の実施計画を進めている。7Beインプラント標的を作成し、7Be(d,p)反応をスペクトロメータを用いて測定する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不安定核停止標的システムを開発し、当初目的である安定核の局所インプラントと、それをもちいた散乱実験の測定に成功した。極めて画期的な成果である。計画の次の段階である最初の不安定核のインプラントと、スペクトロメータを用いた散乱実験の実施に向けた準備作業が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後進めるべき項目は以下の2つである。1) インプラント標的の性能評価とインプラント技術の向上、2) 初の不安定核インプラント標的の作成と散乱測定。 1については、昨年度成功した安定核インプラント標的の作成と散乱測定技術を利用し、装置の向上を計りながら技術向上を進める。具体的には、インプラント位置、深さの制御、温度の制御、インプラント標的の拡散および安定性に関する確認作業である。インプラントホスト標的の材質の選択や、拡散測定の技術的向上を図る。主に大阪大学バンデグラフ加速器を用いて進める。 2については、7Be核を最初の不安定核インプラント標的と定め、現在CNSのCRIB装置によるインプラントを行う準備を進めている。半減期53日であるため、インプラント後速やかに大阪大学核物理研究センターへ移動し、ガンマ線計測によるインプラント量およびインプラント範囲の確認作業を行った後、重陽子ビームを照射して7Be(d,p)反応を測定する。宇宙誕生時のビッグバンでの元素合成を理解する上で重要と考えられている反応の1つである。 さらに今後の展開として、理化学研究所RIBF施設のSLOWRI装置を用いたインプラント標的作成や、米国アルゴンヌ研究所のCARIBU装置を用いたインプラント標的作成を行う可能性を相手機関関係者を含めて議論しており、計画の進行の道筋を立てることが重要となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費として使用する計画を検討していたが、今年度分としては必要がなくなったため次年度使用として繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
成果発表旅費として使用する。
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