自然界に存在しない不安定な原子核であるベリリム7を標的として用いる原子核反応実験手法を実証する実験を行った。大阪大学ヴァンデグラーフ加速器を用いてリチウム標的に 2.6 MeV の陽子ビームを照射し、直径 1 mm の局所的領域にベリリウム7を生成したアクティベーティッド標的を製作した。 この標的に2 MeV の重陽子ビームを照射し、ベリリウム8ができる核反応を45度方向に放出される陽子を検出することにより測定した。シリコン検出器3枚の3重同時測定により目的とする反応を明瞭に観測することに成功した。局所不安定核停止標的による核反応の最初の成功例である。 得られたデータを厚い標的の手法により解析し、散乱断面積のエネルギー依存性を導出した。過去の文献データが存在する0.6-1.3 MeVのエネルギーにおいて良い一致をみている。宇宙誕生時の元素合成の理論計算において、リチウム7原子核の生成量が観測よりも3倍程度大きく予測されていしまう「リチウム7生成問題」の解決のため、0.1-0.4 MeVのエネルギー領域での測定が重要となる。 今回の実証実験成功により、測定手法に改良を加えることで、宇宙核反応において重要な散乱断面積に関して実際に核反応が起きた低エネルギーでの直接測定を行うことができることを示した。今後の研究の道筋を示す大きな一歩となった。
|