クォーク多体系の統一的理解には欠かせない、クォークによるパウリの排他原理の働き方について、3重粒子系(9クォーク系)においてどのような振る舞いをするかについて調べることを目的として、前年度に引き続き当該年度においても我々は、そのために必要な解析的な計算を行ってきた。前年度までに結果を得られた3核子(NNN)系とΞΞΞ系に加えて、宇宙空間に浮かぶ原子核と言われている中性子星の内部においてその存在が確実視されている他のハイペロンたち(Λ粒子、Σ粒子)からなる3重粒子系におけるパウリの排他原理の働き方についての結果を得ることができた。具体的には、中性子星内部においてまず現出すると考えられているΛ粒子1個が加わる(ΛNN系)ことによるパウリの排他原理の効果はそれほど強いものではなく、比較的斥力効果は期待できないことがわかったが、一方でΣ粒子1個が加わる(ΣNN系)ことによるパウリ効果は大きく、ΞΞΞ系と同様な斥力効果が得られることがわかった。しかしながら3重粒子に跨がる反対称化によって生じる3体効果については、ΛNN系においては斥力的な寄与を与えている。いわゆるハイペロンが中性子星内部に現れた際に感じるのではないかと提唱されている「ハイペロンを含む普遍的な斥力的3体バリオン(重粒子)力」としては、9クォーク系(3重粒子系)におけるパウリの排他原理による斥力的効果は、候補とはなり得ず、他の相互作用の要素が必要であろうとの認識を導き出した。これらの成果については研究会及び学会の場において口頭発表を行い、現在論文を執筆中である。
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