本研究では、ニュートリノ質量の精密測定に向けて、トリチウムベータ崩壊からの電子のエネルギースペクトルを0.1eV以下の分解能で測定する為の、電波観測技術を応用した新しい手法を開発する事を目的としている。まずはトリチウムと崩壊電子のエネルギーが近く、半減期の短いクリプトンを用いてエネルギー測定の原理検証を行う事を目指している。 本年度は、昨年度のシミュレーションの結果に基づいて、原理検証のためのプロトタイプ検出器の製作を進めた。また原理検証実験に関しては、使用を予定していた同機構の超伝導低温工学センターに配備されている1テスラの電磁マグネットが今年度も使用の目処がつかなかったため、電波を信号発振器を用いて擬似的に発生しアンテナ部以降の特性の評価にとどまったが、本実験においてS/Nが10程度以上で電子の観測が期待できる事を確認した。
|