本研究の目的は宇宙に存在するダークマター(DM)の分布を時間の関数として測定し、その変化から、宇宙の加速膨張のメカニズム(ダークエネルギー(DE))の本質に迫る事である。DMの分布を測定するためには、重力レンズ効果を用いる。これは、質量中を光が通って来ると光の経路が曲がる効果である。遠方にある銀河の形が、重力レンズ効果によって歪み、その歪みを測定する事によって途中にある質量の分布がわかる。本研究では、銀河の形状とその歪みを測定するために、銀河のモデルを使用しない方法を用いる。本研究で使用する方法で仮定するのは、ただ一つ、銀河のアンサンブル(多数の平均)が等方的であるという事だけであり、きわめて系統誤差の少ない測定法である。本研究では、この方法をHSC広域サーベイの銀河の画像に適用して、系統誤差の少ない質量の3次元分布を得る。サーベイは計画より大幅に遅れており、遠方の重力レンズをより有意性高く測定できる様、宇宙背景放射偏光観測による測定との相互相関の測定を行うこととした。POLARBEAR実験は、既に15平方度の深い観測を行っており、もし同領域をHSCで一晩観測できれば、3.5シグマの有意性で相関が観測できる。オープンユースのプロポーザルを提出したが、サーベイで観測予定の領域であるため、通らなかった。結局サーベイでH27年度末に約半夜観測出来、このデータを使えば2シグマ以上の相関が観測できるはずである。この観測に向けて、5名の若手共同研究者とともにシミュレーションと系統誤差の推定を行っている。また、実際に測定するためには、POLARBEARグループ、HSCグループ間で研究協力協定を結ばねばならず、締結に向けて準備をしている。また歪みの測定法に関して、共同研究者の学生が、H28年10月から本研究者のところで博士課程に進学しHSCサーベイのデータを使って研究する予定である。
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