研究課題
最近、マックスプランク研究所等が4枚の高反射率ミラーを組み合わせた2次元対称bow-tieパルスレーザ蓄積光共振器を使い、平均パワー400kWの安定蓄積を報告した。我々も平均パワーMW級の安定蓄積に耐えるミラー開発の為に、反射率99.99%の低散乱ミラーコートを3種類のスーパーポリシュした次の母材に施し、高強度パルスレーザ照射によるレーザ耐力評価試験を行い以下の結果を得た。合成石英(OPSQSP-30C08-10-5)の場合、破壊閾値446J/cm2、無水合成石英(東ソー製ED-C)の場合、破壊閾値252J/cm2、無水合成石英(AGC製AQ2)の場合、破壊閾値238J/cm2であった。これらの結果から表面管理した合成石英基盤を使い、ミラーの誘電多層膜上の吸収係数を管理しながら、2次元対称bow-tieパルスレーザ蓄積光共振器によるミラー破壊試験を進める妥当性を得た。本実験結果からはpeak power破壊閾値に関する結果は得られない。平成25年度我々の研究グループは、共鳴条件を高精度で維持する技術を開発して光共振器内のレーザ平均パワーを214kW以上にすることができた。今後、光子吸収率を2ppm以下に保つためにclass 10のクリーン室で光共振器の組み立てを行う。製作したミラー間約10.5cmの平面4枚ミラーリング型光共振器の共鳴実験で、出力パワー600mWの714MHz モードロックレーザ発振器を使い、この光共振器の増倍率が約1000倍であることを確認できた。また、この小型光共振器を真空装置中に入れ、真空度10E(-6)Pa 以下にできたので、次年度714MHz モードロックレーザー発振器のレーザーを増幅してレーザパワーを10W以上にする。さらにBurst Amplification Systemで入射レーザパワーを500Wにする。光共振器の増倍率は1000倍になっているので500kW蓄積でのpeak power破壊試験が可能になる。本実験での凹面鏡間中点でのレーザ絞り込みサイズを10um程度にして、ミラー上でのレーザサイズを大きくする予定である。
2: おおむね順調に進展している
計画では10000倍の増幅率を達成する予定であったが、ミラー表面汚染の為反射率が低下したので1000倍程度の増幅率になった。しかし、ミラー破壊実験を行う為の小型光共振器を製作して、その特性測定を終わらせ、次年度から系統的なpeak power破壊実験が行えるように成ったので、達成度は80%以上である。その主な理由は以下の成果が得られたからである。使用しているミラーの誘電多層膜のpower density破壊閾値は十分に高い値であることを実験によって確認した。別の研究で使用している大型の光共振器中に10psec(laser pulse width)のレーザパルスをBurst Amplification 後入射することによって214kWまでミラー破壊が起きないことを確認した。ミラーのレーザエネルギー吸収によるミラー変形測定によって、ミラー表面汚染の問題が明確になった。Laser peak powerによる系統的な小型光共振器の誘電多層膜破壊試験は平成26年度に行える。
小型光共振器設計および性能評価に予想以上の時間を要したので、高反射率ミラー取付およびレーザ入射光学系Upgrade等の予算執行を次年度行うことになった。平成24年度と平成25年度に製作した小型光共振器の増大率は1000倍程度であったので、その増幅率を上げる為に小型光共振器改良に100万円程度使用する。また、レーザの入射マッチング調整に光学部品が必要になる(40万円程度)。成果報告の為に30万円程度の経費が必要である。
平成24年度に製作した小型光蓄積装置の性能を達成する為に、環境温度の安定化、ノイズ環境の改善、クリーン作業環境整備やフィードバック回路の改良等を主に別設備予算で対応することによって、本研究に必須な装置性能達成に手間取ってしまった。平成26年度はさらに増倍率を上げる為に、吸収率の小さい反射率99.999%のミラーに取り換えるので、装置性能改善に150万円程度の予算を使う予定である。また、最終結果を国際会議等に発表する。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (19件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件) 備考 (2件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A
巻: A745 ページ: 63-72
10.1016/j.nima.2014.01.055
NIM in Physics Research Section A
巻: 740 ページ: 2 - 5
10.1016/j.nima.2013.12.029
巻: 740 ページ: 226 - 228
10.1016/j.nima.2013.10.043
巻: 740 ページ: 131 - 137
10.1016/j.nima.2013.11.041
J. Instrum.
巻: 9 ページ: P02007-1,-12
10.1088/1748-0221/9/02/P02007
Phys. Rev. ST Accel. Beams
巻: 17 ページ: 023401-01, -11
10.1103/PhysRevSTAB.17.023501
巻: 17 ページ: 023401-01, -09
10.1103/PhysRevSTAB.17.023401
巻: 17 ページ: 021002-01, -08
10.1103/PhysRevSTAB.17.021002
Phys. Rev. Lett.
巻: 112 ページ: 034802-01, -06
10.1103/PhysRevLett.112.034802
NIM in Physics Research Section B
巻: 319 ページ: 17 - 23
10.1016/j.nimb.2013.10.025
NIMA
巻: 728 ページ: 53 - 58
10.1016/j.nima.2013.05.196
巻: 724 ページ: 63 - 71
10.1016/j.nima.2013.04.066
Jpn. J. Appl. Phys.
巻: 52 ページ: 056401-1, -7
10.7567/JJAP.52.056401
http://kocbeam.kek.jp/
http://nkocbeam.kek.jp/