本研究は、ニュートリノの飛行時間のエネルギー依存性を測定することによって、ニュートリノの質量を直接的に探索するものである。まず一つの飛行時間の測定例としてT2K実験で、295kmの距離をニュートリノが飛行した際の飛行時間エネルギー依存性を解析し、ミューニュートリノの質量が2.4MeV以下であることを示した。(論文[1]、PRDに投稿中)。これは、現在のPDGのミューニュートリノの質量直接測定の上限値に肉薄する結果をPDGに掲載されている方法と全く独立の方法で質量直接探索を行ったものであり、これからの展開にも期待できることを示した。 その後、飛行時間測定精度を上げるためにどのような方法があるかを検討し、その実践を行った。まず、地球規模で離れたニュートリノ生成(T2Kの場合は、茨城県東海村)と検出地点(T2Kの場合は岐阜県神岡町)の同時性を保証するGPSシステムを新しくし、その較正を静止衛星を使って行った。注;NICT研究所との共同研究(備考欄のURL等を参照のこと)。結果として、新しいGPSシステムを使えば、数ns以下の精度で茨城県東海村と岐阜県神岡町の同時性を保証することが可能であることを示した。更に、ニュートリノ生成ビームラインの時間測定に関連する機器の精密な較正を行い、3ns以下程度の精度でニュートリノ生成時間を理解できるようにした(論文を準備中)。このように、ニュートリノ生成部分と地球規模で離れた数100kmでのGPSを使った同時性の部分は5ns以下の精度での測定・較正が可能であることを本研究は示した。 最後に、本研究にどのような発展性があるかの検討も行った。ニュートリノのエネルギーを下げる、飛行距離を増加する、発生・検出時間の精度を上げる等の方法があることを理解した。そのうち、電子ビームで数10MeV電子ニュートリノを作成する方法を検討した。
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