研究課題/領域番号 |
24654078
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研究機関 | 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター九州シンクロトロン光研究センター |
研究代表者 |
高林 雄一 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター九州シンクロトロン光研究センター, 加速器グループ, 副主任研究員 (50450953)
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研究分担者 |
隅谷 和嗣 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター九州シンクロトロン光研究センター, ビームライングループ, 副主任研究員 (10416381)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | パラメトリックX線 / 相対論的電子ビーム / 結晶 / ビームモニタ |
研究概要 |
従来、リニアックの電子ビームの高精度プロファイルモニタとして、可視遷移放射(OTR)がよく使用されてきた。しかし最近、X線自由電子レーザー施設であるアメリカのLCLSや日本のSPring-8 SACLAにおいて、ビームのバンチ長が短いために、OTRがコヒーレントになり、プロファイルを正しく測定できないことが判明した。また、国際線型加速器(ILC)では、ビームサイズが可視光の波長よりも小さいために、やはりOTRはコヒーレントになることが予想される。コヒーレントになることを防ぐには、より波長の短い光を使用する必要がある。そこで、本研究では、パラメトリックX線(PXR)の利用を提案する。PXRとは、相対論的電子ビームを結晶に入射させたときに、ブラッグ条件を満たす方向にX線が生成される放射現象である。 本研究では、X線検出器を結晶の近くに設置する“近接法”と遠くに設置する“遠隔法”を提案する。九州シンクロトロン光研究センターのリニアックからの255 MeV電子ビームをシリコン結晶に入射させてPXRを生成し、下記の研究を行った。 1.【近接法】X線検出器を用いてPXRを直接捉え、観測されたPXRのプロファイルから、計算により電子ビームのプロファイルを求める手法である。すでに原理の検証実験に成功した。 2.【遠隔法:ピンホール法】PXR光源点とX線検出器の間にピンホールを設置し、PXR光源点(ビームプロファイル)の像を、検出器上に再構成するという手法である。本手法に関しても、すでに原理の検証実験に成功した。 3.【遠隔法:フレネルゾーンプレート法】X線用レンズとしてフレネルゾーンプレートを設置し、PXR光源点(ビームプロファイル)の像をX線検出器上に結ぶという手法である。実際にフレネルゾーンプレートを設置し、バックグラウンドX線の調査を行った。この結果をもとに、実験装置の設計を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、パラメトリックX線を利用した電子ビームのプロファイル測定法として、近接法、ピンホール法、フレネルゾーンプレート法という3つの手法を提案している。研究実績の概要で述べたように、近接法とピンホール法に関しては、すでに原理の検証実験に成功した。一方、フレネルゾーンプレート法に関しては、まだ原理の検証実験には成功していない。しかし、すでにフレネルゾーンプレートを設置して、バックグラウンドX線の調査を行っており、それをもとに実験装置の設計を進めている。よって、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
1.すでに原理の検証実験に成功している近接法とピンホール法に関しては、引き続き、様々な実験条件のもとでデータの蓄積を行っていく。 2.まだ原理の検証実験に成功していないフレネルゾーンプレート法に関しては、以下のように進めていく。 (1)今までに得られた予備的データをもとに、引き続き、実験装置の設計を進める。予備的測定により、バックグラウンドX線の抑制が重要であることがわかっており、それを抑制するための手法を検討する。また、精密なアライメントが必要なこともわかっており、アライメントが比較的容易にできるような装置の設計を行う。 (2)設計・開発した実験装置を用いて、電子ビームのプロファイル測定を行う。 (3)近接法、ピンホール法、フレネルゾーンプレート法、3者の実験結果の比較検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述したように、今までに得られた予備的データをもとに、フレネルゾーンプレート法の実験装置の設計を進めており、設計が終了し次第、装置の構築を開始する。よって、次年度の研究費は、主に本装置を構築するために必要となる物品の購入に使用する予定である。
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