研究課題/領域番号 |
24654090
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
溝口 幸司 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10202342)
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研究分担者 |
大畠 悟郎 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10464653)
萱沼 洋輔 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 教授 (80124569)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | コヒーレントフォノン / 検出周波数依存性 |
研究概要 |
本研究の目的は,コヒーレントフォノン場中での電子・格子結合系の動的応答を時間分解ポンプ・プローブ法により精密測定し、振動励起状態でのダイナミクスを解明する新たな分光手法を切り拓くことである。そのために、時間分解かつ波長分解された反射スペクトル測定手法の開発と応用,および,物質系のミクロなモデルに基づく非平衡応答理論の構築を行うことを目的とした。 上記のコヒーレントフォノン場中での電子・格子系のダイナミクスを明らかにするため、初年度においては、広帯域かつ高速で検出周波数依存性が測定できる波長分解ポンプ・プローブ分光装置を開発し,この広帯域の波長分解ポンプ・プローブ法を用いて、CdTe単結晶におけるコヒーレントフォノンの検出周波数依存性を調べた。その結果,透明領域における検出エネルギー依存性から,ポンプレーザーの中心エネルギーからLOフォノンのエネルギーだけシフトしたところでピークを持つことが分かった。一方,不透明領域における検出エネルギー依存性においては,LOフォノンの2倍のエネルギーでピークを持つことが分かった。特に、吸収端近傍においては、コヒーレントフォノン場により励起子が大きく変調され、励起子共鳴近傍における時間分解反射率変化が増強されて観測されることを見出した。 コヒーレントフォノンの検出機構について,2バンドモデルを用いた理論計算から上記のコヒーレントフォノンの振動ダイナミクスを再現できることを見出した。特に,透明領域の検出エネルギー依存性で,高エネルギー側に観測される振動と低エネルギー側に観測される振動の位相が逆位相であること,また,不透明領域においては,高エネルギー側と低エネルギー側での振動が同位相で振動することを,理論的に示すことができた。さらに,励起子共鳴付近で振動振幅が増強されることを再現することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,コヒーレントフォノン場中での電子・格子結合系の動的応答を時間分解ポンプ・プローブ法により精密測定し、振動励起状態でのダイナミクスを解明する新たな分光手法を切り拓くことである。初年度の目標通り,広帯域かつ高速で検出周波数依存性が測定できる波長分解ポンプ・プローブ分光装置の開発に成功した。また,この広帯域の波長分解ポンプ・プローブ法を用いて、CdTe単結晶におけるコヒーレントフォノンの検出周波数依存性を調べ,得意的な検出周波数依存性を発見し,その結果に対して新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究が概ね計画通りに進んでいることから,申請時における次年度の研究計画の内容をすすめる。すなわち,今後は,種々の測定条件下におけるコヒーレントフォノンの検出周波数依存性の測定結果から提唱されるコヒーレントフォノンの生成・検出機構の統一モデルについて、そのモデルの検証を行うために、主に下記の検証実験および理論検証を行う。 1.ポンプ光の偏光依存性とプローブ光の偏光依存性 2.コヒーレントフォノンの生成・検出機構の理論検証
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究計画を進めるために,一部の費用を実験に必要な物品の購入費に用いる。また,一部の費用を,今までの研究成果,また,今後得られる研究成果を報告するための海外出張旅費および国内出張旅費のために用いる。
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