研究課題/領域番号 |
24654091
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
飯田 琢也 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (10405350)
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研究分担者 |
小菅 厚子 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (30379143)
八木 俊介 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (60452273)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 太陽光発電 / 光物性 / 熱工学 / ナノ材料 |
研究概要 |
金属ナノ粒子複合体中の局在表面プラズモン(LSP)の協力現象による光発熱効果の機構を解明して、太陽光照射下での熱電変換の高効率化の原理を開拓することが本研究の目的である。初年度は、代表者の光発熱Gで開発した球状セルを仮定した離散化積分法(DISC法)を用いて金属ナノ粒子が球殻状に高密度に集積化した構造体に太陽光を照射した場合の理論計算を行い、わずか100秒で約50℃の温度上昇が得られる条件を示した。特に、金ナノ粒子を用いた構造体をポリマー基板上に自己組織化で高密度に配列して作製した光発熱素子では理論値に近い40℃以上の温度上昇が得られることを実験的にも観測した[特許申請中]。 熱電変換Gでは光発熱用熱電変換モジュールに最適と考えられる既存熱電材料の物性値を用いたシミュレーションを行い、光発熱Gが開発した光発熱素子において発生した温度差が熱電変換モジュールに加わったと仮定した場合に数十mW/c㎡という非常に大きな出力密度が得られる可能性を示した。さらに、光熱電変換評価装置を導入して、上述の光発熱素子を市販熱電モジュールに実装して光熱電変換の効率が大幅に増大することを確認した。光熱電変換用の熱電材料の開発については、Ca0.9Yb0.1MnO3の粒子にPdめっきを施すことで、Ca0.9Yb0.1MnO3の粒界に50 nm程のPdがコートされた複合体を形成することに成功した。 粒子合成Gでは金属ナノ粒子の液相合成プロセスにおいて、特に粒度分布の制御法の検討を行った。そこでは、原料となる酸化物粒子の比表面積を大きくすることで、反応場における金属イオンの濃度分布を均一化させ、結果として形成される金属ナノ粒子のサイズのばらつきを抑えることができることを明らかにした。また、この方法を用いて合成した粒径およそ30 nmの銅ナノ粒子が、可視光領域でLSPスペクトルを有することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の交付申請書に記載した内容は、「研究実績の概要」に記載したように、若干の方針の変更はあったもののほぼ全て達成した。また、外部では未発表のため詳細はここでは割愛するが、熱電変換Gとの協力により光発熱効果をさらに向上させるための素子の構成に関する知見も得られ始めている。また、粒子合成Gが提供した金属ナノ粒子に特定条件のレーザー光を照射することで予想外の現象が生じることも明らかになりつつあり、当初計画以上に進展していると言える。さらに、新たな展開として、ナノ粒子を光誘起力と熱揺らぎの相乗効果で高精度に選別する技術に関する理論的な知見も得られ始めている。本提案のメンバーらによる合同セミナーも積極的に行っており、さらに密接な共同研究体制が構築できつつあり、次年度の活動次第で申請時に描いていたゴールの達成はもちろんのこと、想定以上の成果が得られる可能性も期待できると考えている。 ※本課題と関連し、以下の受賞2件があったことも特筆すべき点である。 [1] The Best Poster Award in JSAMA2012 (2012/9/11, Osaka Prefecture University) 発表者: Shimpei Hidaka, Yojiro Yamamoto, Shiho Tokonami, and Takuya Iida [受賞者:Shimpei Hidaka] [2] 日本熱電学会(TSJ2012)講演奨励賞(2012年8月27日~28日、於:東京工業大学) 発表者: 小菅厚子、松沢美恵、[受賞者:小菅厚子]
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今後の研究の推進方策 |
光発熱G(飯田)では、光学的に不透明な熱電変換素子の効果を取り入れたリアルな系を取り扱えるように前年度に整備したFDTD法によるシミュレーションを行う。また、これまでに開発したDISC法を相補的に利用することで、基板上の異なるサイズの金属ナノ粒子集積系を対象として、大きめの粒子におけるプラズモニック超放射と小さめの粒子におけるプラズモニック発熱効果のデザインを行う。さらに、初年度に粒子合成Gが作製した銅ナノ粒子にレーザー光を照射した際に発生する熱の効果を利用した新たなナノ粒子配列方法について検討する。また、理論の結果に基づいて提供されたサンプルの密度やサイズの組み合わせを変えながら、光発熱効果の最適化を行い、熱電変換Gが作製した低温で高効率な熱電変換を示すモジュールに実装することを目指す。 熱電変換G(小菅)では、初年度に開発したナノ構造が熱電特性に与える影響について詳細に検討し、さらなる高性能化を試みる。粒子合成Gが提供する銅ナノ粒子の光発熱特性を光発熱Gの理論によりデザインした上で熱電素子表面に高密度固定化して光熱電変換性能を計測する。特に、光熱電変換評価装置を多点温度計測できるよう改良する事、光熱電効果に最適な熱電材料の開発をさらに進めていく事が重要課題であり、光発熱Gと粒子合成Gと協力して目的の達成を目指す。 粒子合成G(八木)では、初年度に引き続き銅ナノ粒子の合成をしつつ、そのサイズ制御と表面保護による安定化を行うことで、光散乱と光吸収のバランスを調整して光発熱効果の高効率化に貢献する。特にサイズ均一性を高めたナノ粒子を光発熱Gと熱電変換Gそれぞれに供給して光熱電変換の高効率化を後方支援する。特に、より粒径の小さな金属ナノ粒子の合成方法の確立を目指すとともに、光発熱Gおよび熱電変換Gと協力して各種デバイスへの応用を進めて行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
粒子合成Gから提供された銅ナノ粒子をレーザー光で配列制御する新たな試みのため、光出力計測用のパワーメーターを導入して精密な光源制御の準備を進める。また、初年度に計画遂行に必要な基本的な実験設備は整ったため、低抵抗ITO-PENフィルム、金属ナノ粒子(金、銀)、計算補助ソフト、書籍、真空封入用石英管、モジュール作製用部材、切断用・研磨用消耗品、粒子合成用試薬、ビーカーなどの各グループで必要となる消耗品費に予算の大部分を充当する予定である。この他、成果発表および情報収集のための国内外旅費も計上する。次年度当初の使用計画の内訳は物品費:1000,000円,旅費: 500,000円のように考えているが、代表者の飯田がテニュア・トラックの任期の最終年度であり、異動準備等のために研究活動に影響が出る可能性もあり次々年度への繰り越しも視野に入れたフレキシブルな予算計画が年度後半には必要になると考えている。
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