研究課題/領域番号 |
24654091
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
飯田 琢也 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (10405350)
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研究分担者 |
小菅 厚子 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (30379143)
八木 俊介 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (60452273)
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キーワード | 太陽光発電 / 光物性 / 熱工学 / ナノ材料 |
研究概要 |
代表者の光発熱Gでは、前年度に引き続き、球殻状の金ナノ粒子集積構造体と銀ナノ粒子集積構造体をポリマー基板上に自己組織化で高密度配列して作製した光発熱素子の特性評価を理論的・実験的に行った。結果として、用いた粒子サイズ・粒子数・構造体間距離などの条件下では、前者の方が擬似太陽光照射下で高い光発熱特性を示すことが分かった。さらに、これらの金属ナノ粒子集積構造体のスペクトルの広帯域化が局在表面プラズモン(LSP)の協力現象による多重極の超放射に起因することをDISC法を用いて理論的に解明した[米国化学会JPCCに掲載、米国のWebニュースで紹介]。これらの光発熱素子を用いた熱電変換Gとの共同実験により、簡易の熱電変換モジュールを用いて前述の温度上昇の違いを反映した出力が得られることを確認した。また、粒子合成Gで作製した銅ナノ粒子におけるLSPを利用した光発熱素子の特性も計測し、ある程度高い温度上昇を得ることができ安価な光発熱素子開発への展開可能性も示した。 これらの成果の他、新たな方向性として、赤外レーザー光照射下でのLSPの協力現象に起因する光発熱効果についても検討した。上記の金属ナノ粒子集積構造体の分散液にレーザーを集光することで数秒~数十秒程度でスポットサイズよりもケタ違いに広い領域で相転移を誘起し、その界面に構造体を多数集積して数十μm~数百μmの大きさのマクロな複合体を作製できることを明らかにした。さらに、このような光照射下での複合体の形成過程をシミュレートするための計算手法のプロトタイプ開発にも成功した。また、熱凝固性物質(凝固点約80℃)との混合液を用いた実験で、凝固反応を誘起することに成功した[特願2013-096817]。さらに固化した後にレーザー光で加工できることも示し、光発熱効果の新しい応用展開につながる知見も得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、本年度の目標であった光発熱素子と熱電変換モジュールの統合に関して進展があった。そこでは、簡易の熱電変換モジュールに異なる種類の光発熱素子を実装する予備実験に成功しており前半は順調に研究が進展した。また、光照射下での金属ナノ構造の集合過程を評価できる計算法の基礎部分が構築できた点、FDTDシミュレーションのための環境整備ができた点も重要な進展と考えている。しかしながら、代表者自身の任期満了に伴う異動準備のために後半は研究課題の遂行自体が困難となり遅延が発生し、H26年度への延長の必要性が生じた。その傍ら、光発熱素子を実装する熱電変換モジュールの部分のデザインを熱電変換Gが行い、目標達成に向けて着実な前進があった。また、粒子合成Gでも銅ナノ粒子のサイズ制御に関して進展があり、光発熱素子の低コスト化に向けて着実に駒を進めることができた。これらの進捗状況からも、期間延長による目標達成は十分に期待できる。 ※本課題と関連し、以下の受賞1件があったことも特筆すべき点である。 [1] 第34回応用物理学会講演奨励賞(平成2013年9月、於:同志社大学) 受賞論文:「熱揺らぎによる超高精度ナノ光スクリーニングの原理開拓」 著者:田村守、飯田琢也、[受賞者:田村守]
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでに代表者および分担者らのグループで培って来た知見を結集し、太陽光熱電変換素子のプロトタイプの開発に集中する。特に球殻状金属ナノ粒子集積構造をポリマー基板上に集積するための条件の最適化を行い、プラズモニック発熱効果の高効率化を目指す。同時に、理論的観点からもフィードバックをかけ、光発熱素子として最適な構造を探る。具体的には、異なる透過率の基板を用いた場合のシミュレーションをFDTD法を援用して行う。そこで得られた知見も活かして作製したプラズモニック光発熱素子の熱電モジュールへの実装のための詳細な条件探索を行う。 熱電変換Gでは、光熱電変換性能測定のための実験系の構築をすでに完了しており、これまでよりも高性能の熱電変換モジュールを用いた実験系で、光発熱素子の性能を引き出すための条件探索を行う。特に、熱力学的な観点から熱電変換モジュールに効率良く発生した熱を伝達するための構成について検討を行う。また、引き続き低温で高効率な熱電性能を示すナノコンポジットの開発も行い、さらなる効率改善を目指す。 粒子合成Gではすでに銅ナノ粒子のサイズ制御をある程度行えるようになっており大量合成にも成功している。特に最終年度は、代表者Gと連携し、基板への金属ナノ粒子の高密度固定のための最適条件を、これまでの自己組織化法に加えてスピンコートや光照射などを行うことで探索する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
金属ナノ粒子複合体をベースとしたプラズモニック光発熱素子の作製は順調だが、代表者の飯田がテニュア・トラックの任期の最終年度であったため、異動準備により熱電変換モジュールへの実装と変換効率の測定の実施が困難となり遅延が発生した。この遅延を挽回して目標を達成するためには、計算補助ソフトウェアの継続使用や熱電変換モジュール実装用の部材が必要であり、平成26年度への補助事業期間の延長と繰越を行ったため次年度使用額が生じることとなった。 次年度使用額の具体的な使用計画としては、上記のように光発熱素子の熱電変換モジュールへの実装を行う際に必要となる部材や、光発熱素子の最適化のためのシミュレーション補助ソフトウェアの保守費、成果発表旅費等への使用を検討している。使用予定額の内訳は以下のように考えている。 成果発表旅費等:105,970円、その他(部材、ソフトウェア保守費等):300,000円
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