研究課題/領域番号 |
24654097
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
南 英俊 筑波大学, 数理物質系, 講師 (00190702)
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研究分担者 |
門脇 和男 筑波大学, 数理物質系, 教授 (00272170)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | テラヘルツ / 高温超伝導 / ジョセフソン効果 / 光吸収係数 |
研究概要 |
本研究は、高強度の単色連続テラヘルツ波光源によるイメージング技術を利用した、高精度のテラヘルツ帯光吸収係数計測技術を提案し、精密物性研究への応用の可能性を探求することを目的としている。 今年度は、国際会議のプロシーディングを含め論文発表を10件、学会発表19件を行い、また、特許出願を1件行った。論文の内1件は本研究課題の直接的成果であり、高温超伝導体テラヘルツ波発振素子を用いたイメージング技術を利用して、サブテラヘルツ周波数帯での水およびエタノールの光吸収係数を高精度に測定した結果を報告している。8件の論文と学会発表19件は発振素子の動作理解に関係したものであり、今後発振素子の出力と性能を向上させていく上で有用な知見を含んでいる。特許出願は、単色連続テラヘルツ波光源によるイメージング技術を利用した、テラヘルツ帯光吸収係数計測技術に関するものであり、本研究課題の直接的成果である。 高温超伝導体テラヘルツ波発振素子を用いた光吸収計測システムについては、光学系、試料セルと電気信号処理系の改良によって、0.5THz付近のサブテラヘルツ帯での水の光吸収係数を有効数字2.5桁の測定精度で計測できるまでに、また、試料の温度を5℃~60℃の範囲で制御できるようになった。発振素子については、特に、素子内の温度分布の測定と計算機シミュレーションによって、発振素子の動作、特に素子内の温度不均一とその制御について理解を深めることができ、高出力化に向けた一つの明確な方向性が見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度終盤から本格化する予定であった物性研究応用に着手できていない。発振素子の歩留まりが現状では製作者の技量に依るところが大きく、十分な発振強度、安定度と素性の良い変調特性をもつ発振素子が得られないことが原因である。
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今後の研究の推進方策 |
[試料温度の制御が可能になったシステムによる物性研究の本格化]: 使用に耐える発振素子の作製、供給体制にこれまで以上に力を注ぎ、製作したテラヘルツ帯光吸収係数測定システムを使って物性研究を精力的に進める。水溶液中で水素結合した分子の状態や大域構造(相)と分子の集団運動の組成変化、温度変化等々の検出を試みる。その他様々な対象で測定を行い、精密物性研究への応用可能性を探求する。 [発振素子の高出力化と高性能化によるシステムの高性能化]: 昨年度導入した計算機シミュレーションによって、発振素子の動作理解を深めることができたが、今後はさらにその知見をもとに高出力化と高性能化に向けたデバイスの設計を行い、今後使用可能となる共用設備のレーザー描画装置も利用し新規構造の素子の製作を行う。吸収係数の3桁の測定精度とその下の4桁目の変化を検出できる装置の開発を目指す。 [液体ヘリウムフリーのシステムの構築]: 高温超伝導体テラヘルツ波発振素子を使ったこの計測システムを使いやすくするため、小型かつ液体ヘリウムフリーのシステムの構築に着手する。現在テラヘルツ波検出に用いている液体ヘリウムを必要とするInSbホットエレクトロン検出器を、室温動作の小型ショットキーバリアダイオード検出器に置き換える。また、現在発振素子の冷却に用いているヘリウムフロークライオスタットに替えて、既存の小型スターリング冷凍機を利用できるか検討するとともに液体窒素冷却の可能性についても検討し、ポータブルテラヘルツ光源システムを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
室温動作の小型ショットキーバリアダイオード検出器(115万円程度)を購入し、現在テラヘルツ波検出に用いている液体ヘリウムを必要とするInSbホットエレクトロン検出器に置き換え、小型かつ液体ヘリウムフリーのシステムを構築する。テラヘルツ波発振素子の作製のためのミリング・蒸着用マスク(25万円程度)、結晶アニール用ガスを購入する。発振素子と検出器の冷却に必要な液体ヘリウム、液体窒素、ヘリウムガス、窒素ガスを購入する。研究代表者、研究分担者および研究に参加する大学院生が学会で成果を発表するための旅費の一部を本研究費で賄う。その他、薬品等の消耗品を購入する。本年度の未使用額154,505円(内28,400は研究分担者分)については、本年度に購入予定であった試料薬品が実験の遅れから次年度に購入することになった。また、一部を今後使用可能となる共用設備のレーザー描画装置の使用料にあてる。
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