本研究は、有機導体結晶の合成を非日常的環境であり、且つ、これまで全く行われてこなかった高圧下という環境に着目し、そこでの結晶合成に関する技術的研究を行い、さらには、日常的環境下では、合成できない新たな新物質の創生を目指すものである。これまでの研究を通して、まずは、圧力下での結晶合成に成功した。最初の物質は(BEDT-TTF)(TCNQ)という物質で、高圧印加によって、溶質の溶解度を低下させ結晶を析出させるものであった。次に、高圧下での電解合成をおこなうべく、高圧下電解合成法の手法の確立をめざした。試行錯誤の結果、この方法を確立させ、一部の有機物質においては、結晶合成に成功した。以上のような成果は、有機導体分野における成果というだけでなく、結晶合成分野、電気化学分野における新手法の確立を意味する。しかし、現時点では、新物質の創生にいたっておらず、また、高圧下では結晶に質の低下という新たな問題も浮かび上がってきた。今後も、このような課題に挑戦し、新たな展開を追求したい。これまでの、基礎的な技術研究は、今後の研究におおいにいかされるであろうと期待される。
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