研究課題/領域番号 |
24654101
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮川 和也 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90302760)
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キーワード | ディラック電子系 / 電荷秩序 / 有機導体 / 圧力 / 電子相関 |
研究概要 |
研究2年目にあたり、前年度の圧力下におけるa-(BEDT-TTF)2I3塩の電気抵抗のデータをもとに、圧力下におけるNMR測定を開始した。 この結果、5kbarという低温では電荷秩序相(非磁性相)が出現する圧力において、電荷秩序転移温度は低下するのに対して、NMR測定による電荷秩序相のスピンギャップの大きさは常圧よりも大きくなっている可能性を見出した。加えてディラック状態(a-(BEDT-TTF)2I3塩の20kbar加圧下)での高磁場におけるNMR測定も開始した。 ディラック電子状態ではスピン-格子緩和率,1/T1,が数千秒以上となり測定が長時間に渡たる。 これによって、測定上、強磁場の時間安定性という問題が生じることを見出した。これに対しては超伝導磁石の駆動電源の環境温度の管理を行うことにより従来よりも安定した磁場を発生することができた。高磁場下でのNMRスペクトルの温度依存性および一定温度でのスペクトルの磁場依存性が変化していることから、そこでなんらかの電子状態が変化している可能性を見出した。 これらの測定では温度依存性が重要となるため、温度コンローラ(Lake Shore社350型)を導入した。 これらの研究結果を国内外の学会、研究会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の電気抵抗測定に加え、本年度からはもう一つの測定量となるNMR測定を開始した。これにより、圧力下での電気抵抗によってディラック状態およびその周辺物性における電荷自由度の振る舞いを、NMRよってスピン自由度の議論が可能となった。NMRおける印加圧はまだ低温でディラック電子状態は出現せず、電荷秩序形成が起こるという低い領域であるものの、高圧領域まで目処が立っていることから、実験はほぼ計画どおりに進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたるため、実験をより加速させる。 磁場印加方向を変えたNMR測定によって、電荷秩序状態、ディラック状態における電荷分布の様子を測定し、さらに電気抵抗との同時測定から、マッシブディラック状態の有無を議論する。電荷秩序状態では圧力によって電荷およびスピンギャップがどのようになるのかにも着目して実験を行う。 加えてディラック電子系の強磁場での状態をNMR測定によって明らかにする。 さらにこれらの結果をまとめて学会、会議などで発表、議論を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験装置を制御するプログラムの見直しを行うことにより計画していた実験補助が不要となり謝金が不要となったため。 核磁気共鳴装置の特性改善に必要となる高周波パーツなどを購入し測定時間を短縮し、研究ををより加速させる。研究成果を公表するための学会などへの旅費として使用する。
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