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2013 年度 実施状況報告書

超伝導転移の揺らぎ効果を精密にとらえる新しい線型・非線型電気抵抗測定手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 24654104
研究機関京都工芸繊維大学

研究代表者

萩原 亮  京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (70198654)

キーワード超伝導転移 / 非線型電気抵抗 / Fourier解析 / 微小電気抵抗 / 計測技術 / パルス電流 / 3点差分法
研究概要

本研究は、非一様性を伴う酸化物超伝導体の電気抵抗消失過程における非線型特性を計測するため、新規考案した原理による実験システムを構築し、その計測手法を(産業サイドを含む)公共に供することまでを目指し開始された。初年度において、測定原理を確認する試験プログラムを開発することができたので、続く本年度では、試験測定の対象とする酸化物超伝導体関連試料を合成するとともに、その電気抵抗の振る舞いを、新規開発課程の測定装置系を用いて実測する段階に進んだ。
試料合成は、従来より重点的に扱ってきたPr247系に加え、純粋Pr124系も対象として、常圧酸素条件で、従来以上に相純度の高い生成物を得ることに取り組んだ。その結果、前駆体を得るときの元素組成をややずらすこと(詳細は現時点で伏せる)、および、煆焼処理にかける段階で前駆体粉を加圧・固形化すること、の両工夫により、両物質とも、十分な単一相生成物が得られることを見い出した。ただし、この合成手法の一部は、国内学会の場で公表したが、今後の特許申請をにらんで、根本をなす詳細パラメータの公開は保留している。
得られた純粋Pr247試料について、新規装置系で明確な超伝導転移を確認することができた。さらにこの試料を、共同研究者に提供することで、磁化と熱電効果の測定を実施して、電子構造の観点からCuO二重鎖部分の1次元的超伝導が発現していることが確かめられた。
一方、今年度に着手した純粋系Pr124の電気抵抗測定の試験を行う中で予想外の重大な発見があった。CuO単鎖構造部分のないこのPr124を真空加熱処理すると、重量欠損は0.2%程度にとどまるが、およそ20K以下で電気抵抗が急峻に低下して、5Kよりやや低温で消失に向かう傾向を示す。この物質の超伝導性の報告がこれまでに無く、CuO二重鎖の超伝導機構が、関連物質系一般で成立することを示唆する結果となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度の段階で、本研究の根幹をなす測定手法の着想を試験し、原理の成立を確認するところまで達成した。本年度は、これを活かした物性測定を進めつつ、特許の出願までを予定していた。ところが、Pr124系酸化物を試料として、試験的な電気抵抗の実測を実施したところ、予想外の超伝導の兆候が見い出され、以後、この物性の追及・確認のために予定外の時間を費やすことになった。主にそのために、特許出願のための準備に十分手が回らなかった。
ただし、以上の事は、本研究が予期せぬ重要な結果を生んだことの表れであり、当初の目的に照らせばやや遅れているとも言えるが、本研究推進の意義は十分発揮され、想定外の事も含めれば、研究成果は大いに上がっていると見なして良い。

今後の研究の推進方策

本年度は、測定原理にかかる特許出願に先ず取り組む。既に、特許関係の専門家とのコンタクトを初めており、夏までに目途をつけることとする。その後、実験技術系の論文誌への投稿・公表にも取り組む予定とする。
以上と並行して、前年度までに生成相純度を大きく高めることができたPr124およびPr247系の合成を継続し、特に、還元処理したPr124系について観測しつつある電気抵抗消失の兆候を徹底的に追及する。これについては、試料を共同研究者に提供して、共著での研究発表を複数行い、結果を広く公共の利に供することとする。

次年度の研究費の使用計画

予定にしたがう物品購入を行った際に、わずかな端数残額が生じたものである。
課題継続のための消耗品費等に充当する。ごく小額であるので、計画には影響しない。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Hall Coefficient in the Superconducting and Non-Superconducting Pr2Ba4Cu7O15-δ Compounds with Metallic Double Chains2013

    • 著者名/発表者名
      Junki TADA, Michiaki MATSUKAWA, Takahisa KONNO, Satoru KOBAYASHI, Makoto HAGIWARA, Tsuyoshi MIYAZAKI, Kazuhiro SANO, Yoshiaki O¯NO, and Akiyuki MATSUSHITA
    • 雑誌名

      J. Phys. Soc. Jpn. (Short Note)

      巻: 82 ページ: 105003-1, -2

    • DOI

      10.7566/JPSJ.82.105003

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effect of Magnetic Field on the Superconducting Phase in the Electron-Doped Metallic Double-Chain Compound Pr2Ba4Cu7O15-δ2013

    • 著者名/発表者名
      Taiji CHIBA, Michiaki MATSUKAWA, Junki TADA, Satoru KOBAYASHI, Makoto HAGIWARA, Tsuyoshi MIYAZAKI, Kazuhiro SANO, Yoshiaki O¯NO, Takahiko SASAKI, and Jun-ichi ECHIGOYA
    • 雑誌名

      J. Phys. Soc. Jpn.

      巻: 82 ページ: 074706-1, -6

    • DOI

      10.7566/JPSJ.82.074706

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Dependence of memory effects on the stop temperature and the probing field in a ceramic YBCO superconductor2013

    • 著者名/発表者名
      H. Deguchi, M. Syudo, T. Ashida, Y. Sasaki, M. Mito, S. Takagi, M. Hagiwara, K. Koyama
    • 雑誌名

      Physics Procedia

      巻: 45 ページ: 129, 132

    • 査読あり
  • [学会発表] 単一相Pr2Ba4Cu7O15-δの超伝導転移の挙動 -磁気応答による評価-2014

    • 著者名/発表者名
      宮崎烈, 池上正太郎, 御池卓正, 島龍夫, 萩原亮
    • 学会等名
      日本物理学会 第69回年次大会
    • 発表場所
      東海大学 湘南キャンパス
    • 年月日
      20140328-20140328
  • [学会発表] 金属二重鎖Pr247超伝導体のホール効果と磁場中比熱2014

    • 著者名/発表者名
      今野嵩久, 多田純樹, 松川倫明, 小林悟, 萩原亮, 佐野和博, 大野義章, 佐々木孝彦, 松下明行
    • 学会等名
      日本物理学会 第69回年次大会
    • 発表場所
      東海大学 湘南キャンパス
    • 年月日
      20140328-20140328

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公開日: 2015-05-28  

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