研究課題
本研究の目的は、有機芳香族分子、グラファイト、グラフェン、フラーレンを始めとする炭素系物質への金属インターカレーションを、各種の溶媒を使った低温プロセスと、イオン液体を使う電気化学反応により遂行し、新規な超伝導体を作製することにある。25年度は、24年度に続いて液体アンモニア法によって、金属原子をピセン、グラファイトに挿入することを進めるととともに、イオン液体を使った電気化学反応によってC60ならびにピセンに金属原子を挿入し、超伝導を発現させる実験を行った。また、ピセンやグラファイトと同様に二次元層状物質である鉄セレン(FeSeTe)系に金属原子を挿入して、新しい超伝導体を発見するとともに、高圧で極めて高い超伝導転移を見いだした。以下に研究成果の概要をを箇条書きで記載する。1)ピセンにLi原子を挿入する実験を、液体アンモニア法により進め、Li5piceneの組成により超伝導体を作製することに成功した。超伝導転移温度は11 Kである。フラクションは1%程度である。Liのインターカレーションで超伝導転移が観測されたのは今回が初めてである。24年度と25年度において遂行した挑戦的萌芽研究において、アンモニア法で金属インターカレーションが可能であることが確認できたので、さらに高い超伝導体積分率を実現する研究を進める必要がある。2)グラファイトとFeSe1-zTezについてアンモニア法で金属インターカレーションを進めた。その結果、CaやYbがグラファイトに挿入でき超伝導体が実現できることがわかった。さらに、FeSe1-zTezへの金属インターカレーションを行って、新しい超伝導体を作製した。これまでに常圧で31 Kの超伝導体である(NH3)yCsxFeSeが高圧で著しく高い超伝導転移温度を示すことを見いだした。3)C60に対して電気化学反応でK原子を挿入して超伝導相が生み出されることを見出した。これらの結果は現在論文作成中である。
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