研究課題
鉄系超伝導の基本物質 CaFe2As2 における格子コラプス転移、すなわち結晶の c 軸方向へのヒ素の化学結合形成に伴う結晶体積の急激な収縮を利用したアクチュエータの創製に取り組んだ。格子コラプス転移の生じる温度を調整し、室温付近でアクチュエータ動作を可能にするために、CaFe2As2に様々な化学種のドープを行った。その結果、(1) Fe の一部を Rh で置換する, (2) Ca の一部を La で, Fe の一部を Ru で置換する、という手段により格子コラプス転移温度が 300 K まで上昇することが明らかになった。さらにX線回折実験から、格子コラプス転移において c 軸長が不連続に変化し、アクチュエータ動作が確認された。また、Ru と Rh 以外の化学種のドーピングの効果を調べる過程で、副産物として3つの新しい超伝導物質を発見した。第一が La と P をコドープした CaFe2As2 で、超伝導転移温度は 45 K となった。この成果は鉄系 122型の超伝導転移温度の最高値を5年ぶりに更新するものである。第2は Ca10(Ir4As8)(Fe2As2)5 であり 16 K で超伝導を示した。第三は La をドープした CaFeAs2 で、112型と呼ばれる新しい鉄系超伝導の基本物質となった。超伝導転移温度は 43 K であった。
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