研究課題/領域番号 |
24654108
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
矢野 英雄 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70231652)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 低温物性 / 超流体 / 量子渦 / 回転流 |
研究概要 |
本研究では、超流動ヘリウム中で動く超伝導モーターを開発する。最近の我々の研究から、粘性のない超流動ヘリウムでも、量子渦を付着させた物体を動かすことで超流動の流れをつくることがわかってきた。このアイデアをもとに、量子渦を付着させた物体を回転し、超流動ヘリウムに回転流を誘起するためのモーター開発を目的とする。本年度の主な研究実績は以下のとおりである。 1.超伝導モーターに、摩擦による発熱が小さく、また摩耗が少ないブラシレスモーターを採用した。モーター駆動には回転を検出するセンサーを必要とし、駆動制御回路も複雑になるが、回転の制御が容易に行える利点がある。 2.ブラシレスモーターを低温で回転させるために、回転を検出する磁気センサー(ホール素子)、回転軸をサポートするベアリング、コイル内のフェライトについて、低温での性能を調べた。磁気センサーは、著しく性能が落ちることを明らかにした。これはホール素子の磁気検出性能が温度変化に影響を受けやすいためである。代替手段として、モーター駆動コイルに回転によって誘導される起電圧を利用する方法や、回転検出をせずにモーターを駆動する方法の検討をおこなった。前者の誘導起電圧による回転検出は原理的に温度の影響を受けない方法である。また通常のベアリングは低温で回転できないが、低温用ベアリングに換えると回転することがわかった。フェライトは低温で若干性能が落ちるが、モーター駆動には問題ないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり実験装置の開発・製作をおこない、低温でのモーター駆動における問題点と解決方法について検討し、期待される成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、低温におけるモーター駆動の問題点と解決方法がわかってきた。この結果を踏まえ、次の点を改良し研究を推進する。 1.低温で働く回転センサーとモーター駆動回路の開発 回転センサーを、これまでのホール素子による回転センサーから、回転によって誘導される起電圧を用いる回転センサーに換える。このセンサーは低温でも動作し、これまでの磁気センサーの置き換えが可能だが、回転を検出する感度調整が必要となる。また回転センサーを必要としない3相交流駆動も検討する。以上の方法で、研究を推進する。 2.常流動・超流動ヘリウム回転流の駆動 1の駆動回路により液体ヘリウム中でモーターを回転することで、回転流を駆動する。液体ヘリウムの温度を制御することにより、回転流の常流動状態から超流動状態への変化を観測する。以上の方法で、超流動ヘリウム回転流の実現をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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