研究課題/領域番号 |
24654109
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
山口 明 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 准教授 (10302639)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 低温物理 / 磁気共鳴 |
研究概要 |
核磁気共鳴分光(NMR)法は、物性研究においてミクロなプローブとして広範に用いられている強力な研究ツールである。このNMR法と、申請者らのグループが現在開発しているマイクロSQUID素子(μmサイズの超伝導量子干渉素子)を組み合わせた、新たなμSQUID-NMR法を開発・確立することが本研究課題の目標である。研究1年目の本年度では、マイクロSQUID-NMR法に向けて予備実験を行った。SQUID-NMRの基本的な測定技術の習得を兼ねて、標準試料の選定を行った。はじめに連続波、縦磁化検出時における実際のNMR信号を観測するため、市販のSQUID素子に磁束輸送コイルを組み合わせたSQUID-NMR実験を行った。SQUID-NMRを行うための専用プローブを作成した。実際に作成を行ったのは、静磁場印加用ソレノイドコイル、静磁場トラップ用鉛管、トラップ解除用ヒーター、RF-印加用サドルコイル、磁束輸送コイルなどである。 SQUID-NMR実験は4.2Kにおいて、約30Gまでの静磁場印加状態で最大800kHzのRF印加で幾つかの試料に対して行った。まず、プロトンのシグナルを見るために、氷、凍結した有機溶媒などの試料を行ったがSN比が向上しなかった。次にAl核の信号を見るためサファイア単結晶での測定を行った。Al核の準位は電気四重極分裂により、ゼロ磁場下で既に分かれているので、その状態に磁場を印加することにより、電気四重極分裂準位間の遷移を観測した。Alの遷移はSQUID-NMRにより高いSN比で観測され、標準試料として最も適していることがわかった。 その後、マイクロSQUID-NMR測定のための試料プローブを作成し、最初の実験を行うところまで本年度では行うことが出来た。以上の結果を日本物理学会2013春季大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展していると考えたのは、予備測定を終え、当初の計画通り、マイクロSQUID-NMRの作成に向けて、測定プローブなどの開発を進めることが出来たからである。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の知見を元にして、マイクロSQUID-NMRの開発を行う。SQUID-NMRに適したマイクロSQUID素子の形状を明らかにし、新たなマイクロSQUIDの作成に取り掛かる。はじめにサファイア試料の信号の検出を目指し、それを元に改良を進め、当初の目的としている、様々な固体試料の測定に取り掛かる。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品としては、マイクロSQUID-NMRの実験に必要な寒剤(ヘリウム、窒素)、プローブの改良に必要な、超伝導線材、金属材料を購入する予定である。備品としては、マイクロSQUID-NMRに必要な後段のアンプ、定電流源などを新たに補充することにしている。発表のための旅費(物理学会2回、国際学会1回)の支出を予定している。
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