研究課題
プリオン凝集体はマウス脳内投与で神経症状などのプリオン病特有の症状を示すことが明らかにされている。その形成メカニズム解明のために電子スピン共鳴法(ESR) により測定を行った。プリオンはN末端側領域のランダムコイル、C末端側には三つのヘリックス構造(H1、H2ならびにH3)の構造を持っている。本研究では各ドメインを代表する場所のアミノ酸残基を部位特異的突然変異法でシステイン残基に変換してスピンプローブを導入し、変性剤により凝集させ、凝集体内でプリオン分子間の距離計測を行った。3 nmまでの短距離領域では、電子間相互作用が大きく、連続波ESR測定が有効である。また、3 nmを越える長距離領域の測定のために高磁場とパルス法によるESR測定の高感度化が重要となる。本研究の初年度(平成24年度)はプリオンタンパク質作成とその凝集体作成の系を確立し、連続波ESRによる近接距離計測技術を確立した。さらに平成25年度には分子研のQバンドパルスESR装置を用い、既に確立しているモンテカルロシュミレーション法と組み合わせることにより、高感度の距離計測法を確立した。その結果、プリオン凝集体は互いの分子のN末端領域間は一定の分子間距離を持たないと考えられた。しかしながら、C末端領域のヘリックス間ではH1とH2がH3よりも近接にあることが判明した。このことはプリオンが凝集する際にN末端領域は凝集体形成の関与は小さく、H1とH2のドメインが凝集体のコアの形成に関わっている可能性が大きいのではないかと類推できる。この結果はモデルペプチドレベルではなく、全長のプリオンタンパク質を用いた研究として世界で初めての知見であり、今後のプリオン病の病原体構造の解明において重要な結果となると思われる。本研究は日本獣医学会ならびに電子スピンサイエンス学会年会において発表し、現在、国際学術雑誌に投稿準備中である。
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