研究課題
カロリメトリーによるアルファ線検出のための装置の設計検討及び予備実験を行った。アクチノイド元素がアルファ崩壊により放出するアルファ線のエネルギーを効率よく検出するために、ボロメータの熱容量、応答速度及び到達温度を詳細な検討を行った。当初の見積りに比較して、一桁程度感度を上げる必要があることがわかった。その過程で、測定に使用するクライオスタット及び電源からのノイズによる熱流入が無視できない事がわかり、本科研費を用いてクライオスタット全体を電源系から切り離すことを試みている。これらの成果を次年度の装置作製及び測定に活かして行く。平行して、測定対象となる試料の探索を行った。PuGa3が一軸異方性の強い反強磁性体である事や、古くから知られるUPt3の超伝導秩序変数が自発的に対称性を破っている事等、得られた知見は大きかった。一方、六方晶UGa2は強磁性体として知られているが、強磁性モーメントはa軸方向を向くため、無磁場では強磁性モーメントは等価なa軸方向に分配される。これはわずかな磁場で単一磁区にすることが出来るため、カロリメトリ―への影響を最小限に保ったまま磁区すなわち核スピンの偏極を制御できると期待できる。
2: おおむね順調に進展している
予備実験及び装置の設計はほぼ順調に進んでいる。今年度は、液化ヘリウムの入手が困難となり当初予定していた実験が不可能となったが、既存のヘリウムフリー冷凍機を流用する事により、到達温度はやや不十分なものの、必要なデータを取得することができた。また、測定感度及びノイズの問題が明らかとなったが、対策を講じつつあり、今後の研究に生かす事が出来ると考えている。
これまでの知見に基づき、カロリメータの作製を行う。装置の評価、調整を行いつつ、測定対象単結晶を育成する。比較的扱いやすいウランで測定を行い、その経験を生かして、超ウランへの展開を検討する。また、液化ヘリウムの供給は依然として不安定なため、既存のクライオスタットの改造等も検討して、ヘリウム使用量を低減する事も必要である。
次年度の研究費は、以下の項目に使用する。(1) 測定対象単結晶の作製(原料及び育成装置、評価装置消耗品)(2) カロリメータ作製費用(3) 測定用消耗品(4) 研究打合せ旅費(5) 成果発表費
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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