研究課題/領域番号 |
24654115
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大島 勇吾 独立行政法人理化学研究所, 加藤分子物性研究室, 専任研究員 (10375107)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナノチューブ・フラーレン / ナノ材料 / 物性実験 |
研究概要 |
本研究の目的は、これまで接触抵抗などの問題で明らかでなかった単層カーボンナノチューブなどのナノカーボン物質の伝導機構を、マイクロ波を用いた非接触の伝導評価法(空洞共振器摂動法)を用いる事により、明らかにする事である。 本年度は単層カーボンナノチューブの高配向薄膜について、薄膜内の単層カーボンチューブ含有率を変化させながら、その磁気伝導特性の変化を調べた。単層カーボンチューブ含有率を変化させたいくつかの薄膜試料を4.2Kで調べたところ、含有率約5%のものは、これまでの我々の報告の通り、アハロノフ・ボーム(AB)効果が由来のリニアな正の磁気抵抗を見せたが、含有率約30%でチューブ間接触が起因の弱局在効果及びVariable Range Hopping(VRH)伝導による振舞いが観測された。今後含有率をさらに細かく変化させ、どの程度のチューブ間接触で弱局在効果やVRH伝導が伝導機構に支配的になっていくのかを見極める。そしてさらに、含有率を変化させる同様の測定を二層及び多層カーボンナノチューブでも行い、これらナノカーボン物質の伝導機構も明らかにする。 また、ナノカーボン物質の本質的な伝導機構の解明のために、室温から極低温までの温度依存性をとることが重要であるので、3ヘリウムガスを用いたガスハンドリングシステムを自前で構築した。来年度はこれを用いて単層カーボンナノチューブなどのナノカーボン物質の伝導機構の解明を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は研究実施計画の通りに概ね進展している。 単層カーボンナノチューブ高配向薄膜の含有率依存性については順調に進展している。一方で、本研究のもう一つの柱である、他のナノカーボン物質の研究については、二層及び多層カーボンナノチューブの試料の入手に若干手間取っているが、来年度には入手できる予定であり、本研究を遂行できると考えている。 また、自前の3ヘリウムガスハンドリングシステム構築のために購入した真空部品の納入がかなり遅れたが、年度末にようやくガスハンドリングシステムが完成した。来年度は極低温用の新しい測定プローブを作製し、上記ガスハンドリングシステムを用いて温度依存性の測定を行う事によりナノカーボン物質の伝導機構の解明を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ナノカーボン物質の高配向薄膜試料の非接触伝導度の温度依存性や周波数依存性の測定を行っていく。 分離された金属・半導体チューブそれぞれの非接触伝導度の温度依存性を室温から極低温領域まで調べ、非接触法において伝導度が温度のベキ乗になるかを確認する。また様々な大きさの空洞共振器を用いる事により周波数依存性の測定を行い、TLL状態の検証を行う。 次に、同様の測定を磁場中で試みる。磁場中ではAB効果により金属チューブは半導体的になるため、後方散乱が復活し、TLL状態の温度ベキ乗則が成立しなく可能性がある。この方法を用いる事により、バリスティック伝導の検証を行う。 また、二層及び多層カーボンナノチューブについても同様の測定を行い、その伝導機構を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の主要な物品として3ヘリウムガスを購入する予定だったが、所属研究室が他の予算で購入したガスがあったため、予算の有効活用のためにそれを代用することにした。そのため本年度の研究費に未使用分が生じた。 次年度は、極低温用の新しい測定プローブを作製するので、研究費を上記未使用分を含めそれに利用し、成果報告のための旅費や論文投稿費に研究費を使用する予定である。
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