研究課題/領域番号 |
24654117
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
齋藤 一弥 筑波大学, 数理物質系, 教授 (30195979)
|
研究分担者 |
山村 泰久 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80303337)
菱田 真史 筑波大学, 数理物質系, 助教 (70519058)
|
キーワード | 定常状態熱力学 |
研究概要 |
時間に依存しない非平衡状態である定常状態へ熱力学を現象論的に拡張した「定常状態熱力学」の可能性が議論され,それが成立する系を構成できる可能性も報告されている.熱力学が平衡状態を踏み越えて発展することは人類の自然観の深化にとって極めて大きな影響を持つと期待される.それには理論的洞察だけでなく現実の物質による裏付けが必須であり,実験研究の重要性は明らかである.一方で,定常状態熱力学が実り豊かな現象論として展開できるとすれば,物性が非平衡性に大きく依存する物質があってもよい.そのような典型物質は,定常状態熱力学の成否にかかわらず非平衡状態の科学の今後の展開にとっても特別な重要性をもつ.本研究は,現実の物質に対する精密な実験によって定常状態熱力学について検討を行うと共に,典型物質を探索・特定することを目的としている.このために,精密熱測定技術に立脚した20 年以上にわたる物質をパラメータとする物性科学研究を行ってきた経験が活かし,精密な実験を計画・実施する. 本年度は定常熱流下の実験装置を検討したが完成には至らなかった.超高感度測定を目指し,二つの方式を検討した. ①当初の計画に従って水晶振動子を用い,相転移に伴う粘性変化を検出する方法については,振動子および発振回路の改良により,液晶という粘性の大きな試料中においても発振が可能となった. ②定常熱流の制御と超高感度測定の可能性を検討するため,(水晶振動子ではなく)ペルチェ素子を利用した定常熱流下の実験装置の設計を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,実験装置の試作が済む予定であったが,この段階に到達しなかった.予想以上に水晶振動子の発振がが困難であったためである.その一方で,申請時に考えていなかった方式を発案することができ,この方式を含めた二つの方式での実験装置の試作を並行して進めることになったので,「遅れている」ではなく「やや遅れている」と考えた.
|
今後の研究の推進方策 |
実績欄で詳述した通り,定常熱流下の実験装置については,申請時に考えていなかった方式も含め,試作のめどが立った.できるだけ早期に実験装置を完成させ,物質を対象とした実験に取り組みたい.
|