今年度は1次元自己重力系(重力シートモデル)の数値計算を行った.昨年度までの研究の結果,2,3次元自己重力系に対して普遍的密度プロファイルの存在が明らかになったので,1次元でも同様な普遍性が存在するのかを精査することがねらいである.ここで言う「普遍的密度プロファイル」とは,系の中心近傍にコア(密度が一定領域)を持ち,コアの外側で中心からの距離の冪乗で減少する密度である.更にその冪指数はおよそ,3次元で3/2,2次元で1である.当然これらの冪指数は,熱平衡状態を仮定して得られものではないので,それとは別な安定状態(準平衡状態)における自己重力系の普遍性といえる. 数値計算の初期条件は,ポリトロープ解を採用した.この解を特徴付けるポリトロープ指数を変えることで,熱平衡にない様々な状態を作り出すことが出来る.実際にポリトロープ指数を様々変えて数値計算を行ったところ,特にビリアル比が0の時に「普遍的密度プロファイル」が得られた.さらにその冪指数はおよそ1/2であることが明らかになった.つまり,自己重力系には1,2,3次元にわたって「普遍的密度プロファイル」が存在し,その冪指数は「次元÷2」であることが帰納的に予想できることが明らかになった. 続いて数値計算の結果を説明するため,1次元で重力版Langevin方程式を構築し,それに対応するFokker-Planck方程式の定常解を導出した.するとその定常解は,数値計算の結果と無矛盾であることがわかった.昨年度までの研究結果により,重力版Langevin方程式によって2,3次元の数値計算,観測結果を説明できていたが,それが1次元までも拡張され,本研究課題の一つの目標『次元に依らない自己重力系の統一的記述』が現象論レベルで達成されたことを意味する.
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