研究課題/領域番号 |
24654124
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡邉 陽介 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (30304033)
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研究分担者 |
土井 祐介 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10403172)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 非線形局在振動 / エネルギー局在 / 周期構造 / 離散系 / 非線形格子 |
研究概要 |
本研究の目的は、多数の数値シミュレーション研究や解析的研究においてその存在が示されている非線形局在振動モード(Intrinsic Localized Mode:ILM)の実験的検証をすることである。ILMはこれまでに様々な離散周期系を対象として理論を中心とした研究がおこなわれており、今日、系自身の離散性と系に内在する非線形性により励起される普遍的な非線形振動として認知されている。しかしながら実験的な研究は極めて少ないのが現状である。 本研究では、力と伸びの関係が強い非線形性を示すメカニカルなバネ(非線形バネ)および、この非線形バネと多数の質点、加振装置からなるシンプルな連成振動子列(非線形格子)を作成し、ILMの励起実験をおこなった。非線形バネについては、復元力の大きさが伸び(変位)の1次と3次に比例する強いハードスプリングで、復元力が変位の向き(押しと引っ張り)に関して対称的なバネの作成を目指した。市販のバネや特注したバネをさらに加工することにより、ほぼ同じ特性をもつ非線形バネを20個以上作成することに成功した。20個の同形状で同質量の錘を、作成した非線形バネで一直線上に連結した連成振動子列を組み立てた。振動子列の一端にモーターとクランク機構からなる加振装置を取り付け、加振振動数を変化させて系に励起される振動モードを観察した。励起モードとその振動数の特定にはモーションキャプチャーシステムを用いた。 実験では加振振動数を上げるに従い、次々と線形固有振動モードが励起される様子を確認した。線形固有振動数の上限を超えてさらに加振振動数を上げると、突然、系端で局在した強い振動が発生し、系を伝播することを確認した。この強い振動は系端での反射と伝播を繰り返すが、最終的には加振部と共振し振動子列の座屈を引き起こした。現在はまだ完全に特定できていないが、移動型のILMではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当面の問題であった非線形バネの作成と20個の振動子からなる実験装置の作成、系に励起する振動モードの観測システムの構築を年度内に達成することができた。この実験装置を用いて、予備実験としての系に励起される線形固有モードの特定および理論との比較や、非線形性によるものと思われる局在した強い振動の伝播現象の観察をおこなうことができた。以上のことから本研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
以下の点を中心に研究を進める予定である: 1、線形固有振動数よりも高い振動数で加振したときに現れた、局在した強い振動の詳細な観察をおこない、この振動モードの特定をおこなう。またこれと並行して、実験で用いた諸量をパラメータ値とした数値計算をおこない、得られた計算結果と実験結果との比較をおこなう。 2、現実験装置の拡張をおこなう。振動子の数を増やし移動型振動モードの伝播特性や二つの局在振動の相互作用を詳細に調べる。また非線形バネの改良、作成し直しをおこない、局在振動モードが観察しやすくなるよう、系全体のチューンアップをおこなう。 3、加振機構を変更し、定在型の振動モードの励起を達成する。 4、国内外で開催される学会、研究会に参加し、研究成果の発表や関連研究の研究者らと議論をおこない、本研究の進展を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
特にモーションキャプチャーシステムの選定し直しにより当初の見込み額と執行額が異なったが、研究計画に変更はなく、次年度の研究費と共に、当初予定通りの計画を進めていく: ・物品費 今年度に作成した実験装置の拡張および改良をおこなう予定である。具体的には振動子の増設、非線形バネの改良、これらに伴う加振装置の変更と観測用光学カメラの増設等である。また定在型振動モードの励起を達成するために加振機構そのものの改良を考えている。これらに必要な物品の調達に使用する予定。また得られた観測データの解析および動画を用いたプレゼンテーションのためにPCの購入を考えている。 ・旅費 9月に米国で開催される国際会議(NOLTA2013)および国内で開催される機械系や物理系の学会、研究会に参加し、関連する研究の成果発表や研究者らとの議論をおこなうための旅費を計上している。 ・人件費・謝金 使用予定なし。 ・その他 実験装置に用いる部品の特殊な加工等を専門業者に依頼する可能性がある。
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