本研究は、複数のロウソクを束ね燃焼させた時に観測される炎の振動現象から、気象現象における自己組織化のメカニズムとの関連性を展望した。特に、複数の振動するロウソク火炎間の同期現象から、ロウソク火炎が非線形振動子である事を確認し、火炎群の同期現象が気象現象のダイナミックスに通じるとの仮説を立て、これを検証した。また、昨年度までに見出していた新たな事実(ロウソク火炎上空には回転する対流が発生し竜巻状の渦流となって下降し、ロウソクの炎にタッチダウンした時に火炎振動が開始する)を解明するため、火炎上空の気流の可視化(シャドーグラフやサーマルビジョン等による)と動画像計測処理手法を駆使して定量的に分析し、火炎振動に伴う上昇流・下降流の挙動に関する知見を得る事が出来た。 すなわち、1.サーマルビジョンによる火炎上空の温度分布の可視化、2.シャドーグラフによる火炎上空の密度分布の可視化、3.高速ビデオによる火炎上空での煤の回転の可視化の映像に対して、1)視覚の運動鮮鋭化現象を応用した新開発の動画像強調手法、2)動画像処理による空間フィルタ速度計測手法等を用いて、火炎上空の気流の詳細な速度解析を実施した。その結果、(1)火炎振動開始前の炎上空の対流速度は0.3-0.5m/sを中心とする分布を示す、(2)火炎振動(約11Hz)の安定時期での対流速度は1.5m/sを中心とする分布を示す、(3)振動時には炎の上空10-20cmの領域で約0.5m/sの下降流成分が観測される等が明らかとなった。これらの結果は、火炎上空に不完全燃焼に伴うロウの蒸気が蓄積し、それらが煤を介して凝集しロウの雲を形成し、その高密度の領域が回転流を伴って下降し炎に接近する事で再び燃焼する(炎の伸長)猫像に導く。研究成果は、国際会議(ドイツ)、研究会(北海道大学)等で発表し、現在論文投稿中である。
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