研究課題/領域番号 |
24654127
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
齊藤 慎司 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60528165)
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キーワード | メニーコア演算 / プラズマ粒子シミュレーション / 運動論的プラズマ乱流 |
研究概要 |
本研究では、大量の計算コアを用いるメニーコア演算器であるGraphics Processing Unit(GPU)を用いたプラズマ粒子シミュレーション計算の高速化手法の開発に取り組んでいる。 本研究で用いているkeplerと呼ばれるGPUは2000以上のコアを有しておりそれらを同時に使い処理させることで大量の処理を短時間で実行させることが可能である。しかし、GPUに処理をさせるためにはPCI-Expressを介したデータ転送処理が必要であり、またGPU内にあるメモリもCPU内にあるそれより小容量(8GB程度)である。そのため大規模な演算を行うためにはGPUへのデータ転送手法が重要となる。そのため、使用メモリ量が多い手法である粒子シミュレーションに対してGPUは適用し難いというのが現状である。 この問題点の解決を目的とし、非同期でデータを転送させながら同時に演算を行う手法を開発し、粒子シミュレーション手法へ適用した。これによりGPU演算での1つのボトルネックと言われているデータ転送時間の隠蔽を実現している。この倍精度演算において、Xeon-E5系1コアの7-8倍程度の計算処理速度の向上が得られている。この手法を用いたシミュレーション計算を実行し、運動論的プラズマ乱流のイオン加速プロセスについて研究成果を得、これについて学会発表および論文投稿準備を行った。(論文は2014年4月1日にPhysics of Plasmasにおいて出版された。) GPUの性質としてランダムアクセスや同じメモリ領域へのアクセスがCPUに比べて低速でああり、この部分のチューニングが十分に行われていないため、さらなる効率化が現状実現されていない。今後はこの部分を解決する方法を模索するとともに、GPUを用いたコードによる研究成果の発展を狙う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究ではGPUが内蔵するメモリ量以上の計算をGPU上でCPUより効率的に計算する手法の開発を目的としている。これまで非同期データ転送手法において1つのボトルネックである転送時間の隠蔽は実現出来たものの、ランダムアクセスおよび同メモリ領域へのアクセスによる処理遅延の解決には現状まだ至っていない。このため研究期間を1年延長し、上記遅延要因の解決に挑戦するとともに、将来的にGPUを用いたプラズマ粒子シミュレーション計算の有効性について考察を行う。
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今後の研究の推進方策 |
GPU演算のボトルネックの1つである、ランダムアクセスおよび同メモリ領域へのアクセスによる処理遅延の解決に取り組む。これまでの計算アルゴリズムを1から考え直し、上記アクセスを極力減らすような計算アルゴリズムの構築を行う。またこれと同時にGPUを用いた運動論的プラズマ乱流計算を行い、これに関する研究を発展させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究ではGPUを大容量メモリ計算機に搭載し、GPUを用いた粒子シミュレーションコードの開発、演算高速化を行っている。このGPUを搭載した計算機が当初の予定より安価で購入することか出来たために現段階で未使用額が発生した。 本研究ではGPUを用いた粒子シミュレーション計算の開発・高速化に挑戦するとともに、これを用いて運動論的プラズマ乱流の研究発展に寄与することを目的としている。GPUを用いて演算高速化を実現したプラズマ粒子シミュレーションコードを用いていくつかの研究成果が得られており、これら成果を発表するための論文投稿料および学会・国際会議参加費に使用する予定である。
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